「そこまでです!」
戦場に響く、凛とした声。
次いで、凄まじい爆音と土煙が上がる。
ーー我、ここに在りーー
ーードゴーーーンッ!ーー
「な、なんだ!」
「海軍船が吹っ飛んできやがった!」
「誰の仕業だ!?」
騒ぎだす海軍や海賊達。
そんな中、能力で海軍船を真っ二つにした赤犬は目を細めた。
「無作法な介入、失礼します」
「何者じゃ、われは」
マントに身を包んだ痩躯に低い声が返る。
目深に被ったフードからは、どんな顔か分からない。
だが、その口元はにやりと弧を描いた。
「お初にお目にかかります、サカズキ大将」
「何者じゃと言うとるじゃ」
「私の事は、すでにご存知かと思いますが?」
まるでからかうようなやりとりに、赤犬のマグマが襲いかかる。
が、それはあっさりとかわされた。
赤犬の目元はさらに険しくなる。
「おどれ・・・」
「戦うべき相手をお間違えないよう」
「何じゃと?」
「真に警戒すべきは、黒ひげですよ」
その声に赤犬は聞き覚えがない。
だが女、しかも歳若い声である事は分かる。
「何者じゃ?」
「オハラの真実を以前、頂戴しました。
そう申し上げればご存知では?」
「!」
紡がれた言葉に、赤犬は表情を変えた。
海軍の中でも、その者の名前は話題になっていた。
革命軍との繋がりも懸念され、海軍の機密情報を持ち出した賞金首。
かけられた懸賞金は1億5000万ベリー。
なぜこいつがここにいる?
「これ以上、戦闘を続ければ命が無駄に失われます。
海軍が掲げる正義に反するのではありませんか?」
「弱い海兵に貫ける正義などありゃあせん。
ここで散った方がよっぽど正義じゃ」
赤犬の言葉に、の表情が曇った。
「人命は正義よりも尊いものですよ」
「小娘が、でかい口を叩くな。
正義がなければ人命は存在できんわい」
これ以上続けても平行線だ。
は深々と息を吐いた。
「貴方のような海兵、私は嫌いです」
「破落戸に好かれとうないわ」
「ではセンゴクさんと話をつけてきます」
「貴様のような賞金首、逃すと思うちょるのか?」
赤犬の右腕がマグマに変わり、熱風が顔に当たる。
「戦闘の意志は、ないんですが?」
「じゃかしぃわい!」
ーーギーーーン!ーー
マグマが長剣に弾かれる。
「あの赤犬の攻撃を止めやがった!」
「何者だ、あの女!」
騒然とする中、マントが脱ぎ捨てられた。
「なら・・・」
潮風に揺れる薄茶の髪、深海を溶かし込んだ瞳。
「どうあっても、そこを通してもらいます」
2013.5.2
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