ーー不本意ーー

































































モビー・ディック号に客が来た。
それはマントを纏った、この船には馴染みがある奴の姿で。

「相変わらず神出鬼没だな」
「そうですか?」

マントを脱ぎ脱ぎ、答えるにサッチが肩を竦めた。

「気まぐれでふらりと来んだろ?」
「まぁ、性分に合ってるんで許してください。
サッチ兄さん?」

そう言ってやれば、自慢のリーゼントを振り上げ満面の笑みで親指を立てた。

「よし、許す!」
「とんだシスコンだよぃ」

ほとほと呆れたようなマルコの言葉に、でれっとだらしない表情をしたサッチが呟く。

「マルコ、そんな褒めんなよ」
「・・・・・・」

これ以上付き合うだけ無駄だ、と判断したマルコは勝手にしろとばかりに壁に背中を預けた。
と、は用事を思い出したように声を上げた。

「あ、そうだ!
聞いてくださいよ!これ!」

懐から手配書を取り出し、は二人に見せた。
そこには相変わらず『No Photo』『ALIVE ONLY』の文字。
そして数字の先頭は1、次は5、残りは0の連続。

「なんだ、自慢かよぃ」

以前見た手配書よりも額が上がっているそれに、腕を組んだマルコが言う。
それを聞いたはジト目を向ける。
さも不機嫌の体だ。
そして、はわざとらしくマルコから離れ、サッチが座る欄干の隣に腰を落ち着かせた。
さらに嬉しそうな表情になるサッチ。
それにマルコは眉間に皺を寄せた。

「これ、先週の新聞なんですけどね・・・
ここ!
この記事、読んでください!」
「なになに、『海底の大監獄に現れる謎の美女、噂の真ーー』」
「どこ読んでるんですか・・・その上です」
「悪い悪い。
あー、『北の海で革命軍の活動が活発化。
政府は海軍内部を荒らし回った情報屋が関与しているものと見解を発表した』」
「それが何だよぃ?」

蚊帳の外になりかけたマルコの言葉に、は眉根を上げた。

「何だよぃ、じゃないです!
とんだ濡れ衣ですよ」
「でもよ、革命軍とは顏合わせたことあんだろ?」
「ある・・・と言っていいか、甚だ疑問です」

サッチの問いに言葉尻を濁す。
革命軍を率いるリーダー、ドラゴンとは確かに会ったことはある。
あれは、海にでてすぐ。
7年も前の事でしかも1度だけだ。
その1度で通じてるなどと言われるのはちょっと心外だ。

「心当たりはあるんじゃねぇかよぃ」
「だ、だから!あれは・・・」

マルコに言い募ろうとするが、は言い返す言葉が見当たらない。
うー、と唸るは壁に寄り掛かるマルコを視線で責めるしかできない。

「今更だ。
額が上がったところで、気にする必要ねぇよぃ」
「他人事だと思って・・・」

まぁ、確かに他人事だろうけど・・・
そう思ったはふい、と視線を外す。

(「少しは心配くらいしたっていいじゃない・・・」)

絶対口にしないが。
憮然とするに、察したようなサッチは無精髭の顎を撫でた。

「でも、まぁマルコの言う通りだよな」
「サッチさんまで・・・」

味方がいなくなったことで、はむぅと、眉間にシワを寄せる。
その様子にサッチは不思議そうな表情を浮かべる。

「おいおい、顔写真はまだないだろ?」

一瞬、言われた意味の理解が遅れた。

ーーぽんっーー
「あ、そうでした」
「「・・・・・・」」

拳を叩いたに、呆れた二対の視線。
それを受けたは、乾いた笑みで返す。

「あはは〜・・・
でも、不本意は不本意です!」


















































>余談
、インペルダウンのこの噂はどうなんだ?」
「教えて欲しいですか?」
「調べたのか!?」
「興味があったので。
でも、これは苦労したので高くつきますよ〜」
「兄から金を取るのか!?」
「諸々の経費も含めて500万ベリーですv」
「高っ!!!」






2013.7.15


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