「全く、こんな跡を残して・・・」

嫁入り前の身体に傷をつけるもんじゃない、とのレイリーの呆れた声が背中越しに届く。

「うっ、ごめんなさい・・・」

それしか彼に返すべき言葉をは持っていなかった。










































































ーーわかった事ーー











































































白ひげ海賊団の船を降り、レイリーの所へ戻って来た。
挨拶もそこそこに、レイリーがに言ったのは、

「背中を見せてみなさい」

この一言。
は石になったように固まり、軋む様な首をシャクヤクに向けた。

「シャッキー、レイリーが新しい扉を開けようとしてるんだけど・・・
私、もう父親の姿が眩しくて見えないや」
「あらあら、大変」
「私がそんな冗談で誤魔化せるとでも思っているのかね?」

どうやら誤魔化されてくれないようだ。
レイリーの視線は一時もから動かない。
シャクヤクの方も店の入口の札を『close』にし、そのまま扉に背を預けてしまった。
小さく息を吐いたは、観念したようにシャツの留め具を外していく。
そして下ろした髪に隠れている背中を二人に見せた。
そして、話は冒頭に戻るのである。

「それにしても、どうして分かったの?」

シャツを着直しながら問うた。
何も言ってないし、新聞沙汰になった訳でもない。
命の危険があった怪我なのは事実だが、レイリーが知る術はなかったはずなのだか・・・

とは随分長い時間を過ごしているからな」
「それで分かるものなの?」
「それに普段は髪を下ろさないだろう?」
「まぁ、ね」
「加えれば、歩き方が背中を庇うようだったからな」
「・・・お見逸れしました」

さすがは、海賊王の右腕と呼ばれる男だけある。
その観察眼と洞察力は、自分よりも遥かに優れている。

「兎も角、まずは体調を万全にすることだ。そうでなければ、また旅などできないだろう?」
「行かないよ、しばらくはね」

の切り返しに、レイリーは僅かに目を見張った。
そしてシャツを着終えたはくるりと振り向いた。

「実は、レイリーにお願いがあって帰ってきたんだ」
「珍しい事もあるな。まさかから面と向かって頼み事とは・・・」

それな何かね?と無言で先を促され、は口を開いた。

「私は、まだまだ至らない。
偉大なる航路を旅することは危険と隣り合わせ、命懸けだって分かってた。
でも、もっと力がないとだめなんだ」
「・・・・・・」
「それが、こいつのお陰で分かったの」

の指がシャツ越しにわき腹の傷跡を撫でる。

「・・・そうか」
「だから、強くなりたい」

そう言って、は姿勢を伸ばし居住まいを正した。
そして、レイリーに深々と頭を下げた。

「私を鍛えてください。お願いします」

真剣な声に、レイリーはその姿を見下ろす。
暫くして、

「娘であるお前が、わざわざ畏まって言うことかね?」
「・・・礼儀でしょ?」

一応ね、と顔を上げたは悪戯っぽく笑う。
だが、その目はどこまでも真っ直ぐにレイリーを見つめる。
決意の大きさを汲んだレイリーは、ふっと口角を上げた。

「私の修行は厳しいぞ」
「望むところ!」
















































>余談
「そういえば、ウォーターセブンに新しい会社ができたそうだ」
「あ、そうなんだ。
まだ新聞読んでなかったや・・・」
「なんでもアイスバーグと言う、まだ若い男が造船会社を統合しーー」
「!レイリー、修行ちょっと待って!」
「どうした?」
「知り合いなの!お祝いに行ってくる!」





2013.7.15

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