「マルコさん」
「なんだよぃ」
宴会で賑わう中、その中心から離れたところにある2つの影。
はジョッキの中身から視線を上げ、宴を見ている横顔に告げた。
「長い間、お世話になりました。私、次の島で船を下ります」
ーー再会の約束とーー
の言葉に、僅かに驚きの色を浮かべる表情が返った。
そして、向こうが口を開く前には続ける。
「白ひげさんには昨日お話してきました」
「・・・そうかよぃ」
すでに船長の了解済みだと言うことで、マルコはただそう呟き、視線を騒ぎの方へ戻した。
「ここ数ヶ月はカンを取り戻すばかりに付き合っていただいちゃいまして、ありがとうございます」
ルイーナから全治2ヶ月半は覚悟しておけと、宣言されていた。
が、そこは年齢に助けられたのか、驚異的回復力で1ヶ月半で治した。
しかし、その後の方に時間を食った。
体力と勘を取り戻すのに2ヶ月近くを要してしまったのだ。
「若い衆には良い鍛錬だよぃ。
それに後半は相手にならなかったしよぃ」
「代わりにマルコさんやサッチさん、隊長クラスの方が付き合ってくださったじゃないですか」
ホント、助かりました、とは楽し気に笑う。
その声を聞きながらも、マルコの視線は動かない。
暫しの沈黙の後、はジョッキを置き立ち上がった。
「マルコさん」
の再びの呼びかけに、視線だけマルコは返す。
いつも通り。
そう、いつも通りの声であるようには努めた。
「私がーー」
紡ぎ出す。
「私が、今よりもう少し強くなれたら・・・」
絞り出すように、はゆっくりと先の言葉を続ける。
精一杯の勇気で、その先の言葉を・・・
「聞いて欲しい、話しがあるんです」
約束を取り交わす。
「その時は時間をいただけますか?」
いつもの笑顔でなく。
真剣な視線で。
どれくらい波の音を聞いただろう。
「構わねぇが、一つ言っておくことがあるよぃ」
マルコの言葉を待つ。
先に続くのは何だ?
無茶をするな?自分の力量を分かれ?
思い当たる事はたくさんある。
マルコは身体ごとに向き直った。
久しぶりに、正面から視線を交わしたと思った。
「その畏まった話し方、もう俺にはしてくれるなよぃ」
耳を疑った。
予測を全て覆された言葉。
だが、それは互いの距離が遠いものではない証拠のようで。
ホッとできたそれに、は笑った。
「うん、分かった」
2013.7.15
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