「もう動いて大丈夫なのか、?」
「ええ、ご心配おかけしました」
ーー妹から兄へーー
負傷して10日。
やっとの事で、ルイーナの許可が下り、自分の足で歩き回れるようになった。
だが、ゆっくりとしたペースでだ。
いつになったらトレーニングできるんだ、と聞いたらルイーナの黒い笑みにその先を聞けなかった。
まだ命は惜しい。
だが、当分先ということだけは分かってしまって・・・
身体が訛ってしまうのは確定だった。
「マルコの奴には会ったか?」
「はい。
一度、見舞いに来ましたけど、その後は見てないですよ」
(「あいつは・・・」)
の言葉に、サッチは内心で呟く。
あれだけ言ってやったのに(その為ルイーナの鉄槌を受けた)、まだ何の行動も起こしていないとは。
思春期のガキか、全く・・・
サッチの内心を知る由もなく、は居住まいを正す。
「サッチさん」
「・・・ん?おう、なんだ?」
「ありがとうございました。
ルイーナから聞きました。サッチさんも助けに来てくれたんですよね」
向けられる謝意に、サッチは首を振った。
「俺が助けた訳じゃないぜ。見つけたのはマルコだ」
「でも、大事にならないようにいろいろ手を回してくれたでしょう?」
だから、ありがとうございます、とは繰り返す。
流石、というべきか。
1年以上の付き合いで、こちらの取る行動はこうも易く読まれてしまう。
素直で真っ直ぐな気持ちを当てられ、サッチは照れ隠しで頭をガシガシと掻いた。
「い、いいって。気にすんな、水臭ぇ」
「そうはいきませんよ。何かお礼をさせていただけませんか?」
「病み上がりだろ?別に要らねえよ」
「あら、可愛い妹からのお礼は受け取れません?」
小首を傾げて言ったに、サッチは思わず目を瞬かせた。
何時もなら、の方からそんなことは言わない。
それに、こんな軽口を交わし合うのが随分と久しぶりに感じた。
「しゃーねー!
じゃあ今度、うまいコーヒー、淹れてくれるか?」
「はい、喜んで♪」
親愛に溢れた笑顔。
これをまた見れたことが、何より嬉しかった。
2013.7.15
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