(「やっぱり、あれは夢かな・・・」)

天井を見上げながら、は内心呟いた。









































































ーー彼女の力ーー









































































ルイーナの怒りの洗礼を受け、大人しくベッドで横になる
彼女の言葉も尤もだ、とようやく認識できてきた。
顔を動かそうとするだけで痛む脇腹。
血が足りない事が分かる、末端の冷え。
熱を持った身体に妨げられる思考。
ルイーナは滅多な事では医務室への立ち入りを制限しない。
だのに、自分には未だに面会謝絶。
聞けば免疫力が劣っているから最低、一週間はこのままだという。
人と話すことしか唯一の暇潰しがないというのに・・・(と言ったら寝てなさい、と怒られたが)

「あの、ルイーナ」

机上に向かっている(カルテでも書いてるのだろう)その背中に声をかける。

「どうしたの?」
「ちょっと記憶が飛んでて・・・誰が助けてくれたか、教えてくれません?」

すると、筆を走らせていたルイーナの手が止まった。

「珍しい、覚えてないの?」
「・・・そんなところです」

まぁ、あんな怪我だったんだから仕方ないわね、と振り返ったルイーナは言う。
覚えていない訳ではない。
ただ、あの時のことはあまりにも朧げすぎて・・・
自分が都合良く創り出した思い込み。
そう言われても反論できなかった。
欲しいのは第三者からの証言、記憶の裏付け。
でも、それを確認したとして、自分はどうしたいのだろう?
渦巻く感情に翻弄されながら、はルイーナからの答えを待った。
そして、


































































「マルコ隊長よ」

































































後でお礼言っておきなさいよ、とルイーナは言うが、その言葉は右から左に流れた。
今、何と言われた?
あの記憶は夢ではなく現実だったということか・・・
暫く、固まっていたがようやく理解できたように肩の力を抜いた。

「そう、でしたか・・・」
「あらあら、愛しの王子様が助けてもらって胸いっぱいってわけ?」
「そもそもそんな関係じゃないですよ」

きっちりと訂正を入れれば、なぁんだつまんなーい、とルイーナ。

「つまんないって・・・」
「でも、自分の思いくらいは自覚したんじゃない?」
「!」

ルイーナの言葉に、は再び固まる。
驚いたように見つめられたルイーナは、妖艶に笑った。

「私にはのような力はないけど、女心ならこの船で誰よりも分かっているつもりよ?」

そう言って、ルイーナは立ち上がる。
この分野は彼女には敵わない。どうも自分にはその手の領域は不得手のようだ。
他人なら分かる事も、これが自分には全く適用されてくれない。

「さすがは、ナース長・・・」
「で、どうするの?」
「どうするも何も・・・」

たじろぐに、ルイーナはずぃっと迫った。

「あら、自覚した恋心は伝えるに決まってるじゃない!」
「・・・まぁ、普通ならそうするんでしょうね・・・」

考え込むに、ワクワク顏だったルイーナは怪訝な表情になる。

?」
「・・・今はまだ、このままでいいです」
「もうっ!あなた本当に20?若者の特権は勢いなのよ!」
「あはは、そういうルイーナの方が20に見えますね。
確かもうすぐ、よーー」
「お黙り」

ペシッ、と額を軽く叩かれる。
それに互いに吹き出した。
ひとしきり笑った後、はふぅ、と息を吐いた。

「今のままじゃ・・・」
「うん?」
「今のままじゃきっと・・・依存してしまう気がするんですよ」

そんなの絶対に嫌なんです、と天井を見上げたはぽつりと呟いた。
彼女が一度決めたことは、頑なに変えないことは知っていた。
恐らく、ルイーナが諭したとしても考えをかえるつもりはないだろう。
それにこの手のことは、本人の意思が何よりも重要になる。
それでも、常に一人で何でも解決しようとするの姿はルイーナにとって、放っておけるものではなかった。

は頼ることも覚えないといけないわね」
「あはは、サッチさんにもよく言われます」
「あいつはに構って欲しくて仕方ないから別よ」

ルイーナの棘に、は笑った。

「気持ちには、向き合いますよ。でも、今はまだ・・・」
「今じゃないなら、いつ向き合うのよ?」

ルイーナの問いに、そうですね〜、とは考え込む。

「せめて同じ目線に立つ事が出来てから、ですかね?」
「同じ目線?どういうこと?」
「ふふ、それはヒミツです」

口元に指を立てた
企み顏の彼女からこれ以上聞き出すのは無理だろう、とルイーナは諦めのため息をついた。

「分かったわ。何かあればいつでも相談に乗るわ。
あ、報告はくれぐれも忘れずにね?」
「分かりました。
ありがとうございます、ルイーナ」













































2013.7.15

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