「様子はどうだ?」
「さっき、意識が戻ったそうだよぃ」
「そうか・・・」
ようやく肩の力を抜く事が出来たのは、島を出て3日が過ぎた頃だった。
ーー本当のキモチーー
医務室の前で右往左往。もどかしい時間の流れに苛々。
邪魔だから場所を変えろと、ナース長のルイーナのお叱りを何度受けたか分からない。
それが3日目にして、ようやく解放された。
「今回はマジで焦ったぜ・・・な、マルコ?」
「・・・・・・」
ホッとした様子のサッチがマルコに問うが、質問を受けた当人は何事もなく歩き出してしまった。
あれだけ心配しておきながら、こうも薄い反応とは・・・
3日前のあの時は、感情を露わにしこの騒動が良いきっかけになればと思っていた。
だが長い付き合いのこの男はまた、感情を引っ込めてしまった。
全く、世話が焼ける。
「マルコ、お前もう分かってんだろ?」
「・・・あぁ?」
夜闇に浮かぶ後ろ背にそう言えば、不機嫌そうな顔が返る。
本気で分かってないのか、とサッチは、重い息を吐く。
「は船を降りるぞ」
「だからなんだよぃ。あいつは仲間でもなんでもねぇんだ。
いつ降りようが、あいつの勝手だろぃ」
ふい、と視線を外して言ったマルコ。
そのセリフに、サッチの腹の底がすっと冷えた。
「おい・・・その言葉、本気で言ってんなら俺は怒るぞ」
「俺は間違ったことを言ってるつもりはねぇよぃ」
「マルコ!」
ーーダンッ!!ーー
胸倉を掴んだサッチはマルコに詰め寄った。
「
の事を一番心配してたのは何処のどいつだ!?
そんな奴が、何冷めた事言ってんだよ!」
「お前は俺に何を求めてんだよぃ!」
甲板に響く怒声。
冷静を取り戻したサッチは一つ息を吐く。
「いつまでも自分の気持ちに蓋してんじゃねぇよ」
「・・・・・・」
絞り出された言葉に、マルコは口を噤んだ。
「ダチとして、言ってやってんだぜ」
「サッチ・・・」
胸倉を掴むサッチの手が僅かに震える。
俯いているため、サッチがどんな表情を浮かべているかマルコは分からない。
が、長い付き合いだ。
手に取るように分かってしまう。
「お前が、家族を大事にしてるのは分かる。
だがよ、それは何かを犠牲にして守るもんと違ぇだろ?」
上げられた表情は、ひどく切なく悲しく、悔しげな色に染まっていた。
それを直視できず、マルコは再び視線を外す。
その様子を見たサッチは、もう言う事はない、とばかりに手を離した。
「言うことは言っておけよ」
「何を言えっていうんだよぃ」
「ガキか、お前ぇはよ・・・」
呆れたサッチは、マルコに背を向け歩き出す。
「んな事、てめぇの頭で考えーー」
ーーバダンッ!ーー
「うるっさいっ!怪我人が居るんだから、静かに・・・しろ!!」
ーースコーーーンッ!!ーー
「「痛っで!!」」
突如、開いた医務室のドアから雄叫びと共にルイーナが飛び出した。
そして分厚い医学書(凶器)がサッチとマルコの頭を正確に襲う。
痛みに呻く2人を腕を組んだルイーナが仁王立ちで見下ろした。
「はまだ絶対安静なの。男のヘタレな話は傷に毒よ。
とっとと失せやがれ」
「「Aye Aye Sir・・・」」
2013.7.15
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