ついに幻聴まで聞こえて来た。
もう残された時間は少ないんだ。
『!』
はは・・・
最期だとはいえ、なんて都合がいいんだろう。
ーー襲いかかるpassion 6ーー
このまま、この声に包まれて沈んでいくなら、悪くないかもしれない。
そう思った時、
「
!しっかりしろぃ!」
突如、耳元で響いた声に沈んだ意識が浮上する。
霞む瞳を必死にこらして画像を結ぶ。
ようやく見えたのは、青い炎。
「おい!こっちを見ろぃ!」
「・・・ぅ・・・」
どうしてだ。
なんで、この人がここに・・・
「・・・・・ルコ・・・な、ん・・・」
「今は黙ってろぃ!」
これは現実、なのか?
廃墟の一角、人の気配を感じてドアをぶち破って入ってみれば、最悪の予想がそこにあった。
荒くれ者だと分かる男の集団、その中心にある赤く広がるシミ。
その中心に倒れているのは・・・
「
!」
大声で叫んでも、当人はぴくりとも動かない。
もう手遅れか。
氷塊が背中を滑り落ちる。
荒々しい侵入は、敵の注意を一気に引きつけた。しかし、能力を駆使したマルコの前では敵ではない。
数があるだけで、大した事はない雑魚の群れ。あっという間に部屋に動く者はいなくなった。
「
!」
血溜まりに駆け寄ってみれば、脇腹から背中にかけて大きく開いた傷。
刃物で切られたか。
傷口が僅かに変色していることから、どうやら毒も塗られていたらしい。
「
!しっかりしろぃ!」
なるべく傷に障らないように、体を揺する。
そして、閉じられた瞼が僅かに動いた事で、マルコはさらに頬を叩く。
「おい!こっちを見ろぃ!」
「・・・ぅ・・・」
ゆるゆると開かれる瞳は焦点があっていないようで、なかなかこちらを見ない
歯痒い時間をかけて、はようやく自分を呼びかける相手が誰か分かったようだった。
「・・・・・ルコ・・・な、ん・・・」
「今は黙ってろぃ!」
急いで抱き上げ、背負う。
意識がないのに、身体は驚くほど軽く冷たい。
血を流し過ぎたからか、それとも・・・
不吉な考えを押しやり、翼を広げる。
そして、暁の空へと力強く羽ばたいた。
2013.7.15
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