朦朧とする意識の中、男達の会話が途切れ途切れ聞こえる。

『こんな・・・金じゃ割に・・・ねぇ』
『・・・危険な橋を・・・渡ってる・・・』

どうやら、自分の事で言い争っているようだが、もう意識の外だ。
どうでもいい。









































































ーー襲いかかるpassion 5ーー








































































目の前には、じわじわと血の海が広がっていく。
やはり、それに対しての印象はこんな時でも変わらず、嫌だなぁと思う。
急速に冷えていく身体がまるで他人のもののようだ。
こちらの意思に全く反応しない。
しかし、そんな状態でも頭の一部は妙にはっきりしていて・・・
命の砂が落ちていくのを冷静に受け止めている自分がいた。

(「あっけない、な・・・」)

そんな時、目の前にアクアサファイアが転がっているのを見つけた。
海の、空の、自分の瞳にも通じるその色。
しかし、思い出されたのはそのどれでもなくて。

(「ああ、そっか・・・」)

これを走馬灯というのだろう。
次々に浮かんでくる青は海や空を背景にした、幻想的なもので。
それは自身の瞳にも映したもので。

(「バッカだなぁ、私・・・」)

知らずに、笑いが込み上げる。
すでに声を上げる体力もなかったが・・・

(「ダメ元でも言えば良かった・・・」)

それは遠くない前。
あの人は空からどんな世界を見ているのだろうと、思いを馳せた日。

(「空からの景色、見そびれちゃった・・・」)

耳に残る、素っ気ない声。
文句を返す声。
そして、悪態をつきながらも付き合ってくれた声。
優しい言葉なんて、記憶にほとんどないけれど・・・


































































「・・・い」


































































会いたい


































































「・・・ちど・・・」


































































もう一度だけでいい


































































会いたい

































































ーーマルコーー


































































貴方に会いたい。
こんな時になってようやく気付く私は、本当にバカだ。
ああ、意識が遠のいていく。
寒さがじわじわと競り上がる。
もう、声を出す事も目も開けてられない。
周囲の音も遠退いていくーー


































































!』













































2013.7.15

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