どうして世界を見て回るのか?
どうして一人にこだわるのか?
答えなんて決まりきってる。
なのにどうして、私の周りの人は何度も同じ事を聞いてくるのだろう・・・
ーーNo one knows what may happen tomorrowーー
「うっわぁ・・・」
「なんだよぃ、その凄く嫌そうな顔は」
見張り台で周囲を警戒していた時だ。
ちょうど見回りから帰ってきたマルコが吐いた言葉に、の表情はこれでもかと言うぐらい歪んだ。
それは、以前乗っていた赤髪海賊団の船長にも問われたことで・・・
まさか違う船で同じようなことを聞かれるとは思いもしなかった。
「だって、シャンクスさんと同じ事言うんですもん・・・」
思い出されるのは、シャンクスとの応酬。
自身の内側・性質に深く関わる、この旅の目的。
「みんなお人好しが過ぎますよ。その気遣いは違う人に向けてあげればいいのに・・・」
「ほっとけよい」
マルコが若干不機嫌になったのが分かった。
まぁ話したとて、やぶさかではないか。
気付けばこの人との付き合いも、もう1年を超えようとしている。
不機嫌顔で腕を組んでいるマルコに、くるりと背を向けたは例えば、と前置きし話し出した。
「マルコさん、海ってどう思います?」
「あ?」
「いいから、答えて下さいよ」
「・・・海は海だ。それ以上でもそれ以下でもねぇよぃ」
こっちが聞いたこととその質問がどう関係がある?と思ったマルコ。
だが、はマルコの返答に肩越しに頷きを返すと、
「ですよね。
端から見れば、濃度3%前後の塩などが溶け込んだ水が広大に広がったもの。
でも、ここに人が入ると・・・見方が変わる」
そう言って、は両腕を海に向かって広げた。
「とても広くて、大きくて、人間なんかがどうこうできるものじゃない。
ある野望を持った人からみれば、きっとこの海はキラキラ光って見えて、死を目前にした人からみれば、残酷な海に見える。
人々の生活に欠かせない一部であり、敬うものであり、畏怖し忌むべきものでもある」
そう言って、腕を広げたままはマルコに再び向き直る。
「海一つだけで、こんなに沢山の見方ができるんですよ?」
凄いですよねぇ、と笑顔で呟く。
話の着地点が見えないマルコは、まだ怪訝な表情を崩さない。
それを見たは、挙げていた両手を後ろで組んだ。
「ねぇ、マルコさん」
欄干に寄り掛かかり、瞳を閉じた。
少しの間を置いて、ロイヤルブルーの瞳がマルコを見据えた。
「この世界は、随分と狭く枠組まれてると感じませんか?」
「どういうことだよぃ?」
ますます意味が分からない、という顔のマルコ。
そんなマルコには微笑を浮かべた。
「海賊から民衆を守るから、海軍は正義?海賊が横行する時代を作ったから、ゴールド・ロジャーは悪?
とんだ偏見だと私は思うんです」
そう言って、は海へと視線を移した。
「だってそんなの、勝手に線引きした人の都合のいい世界でしかないじゃないですか・・・」
その言葉に負の感情をマルコは見て取った。
すっと、細められる視線に気付いたは、取り繕うようにマルコから問われた答えを口にする。
「私は歪められていない世界を見てみたいんです。
一人で回っているのは、そこに第三者の介入で世界が変わるのが嫌だからですよ」
ご理解いただけました?と首を傾げたに、マルコは
「随分と小難しいことを考えるよぃ」
「年相応でない事は自覚済みです」
何しろレイリーのお墨付きですから、とは軽口を叩く。
「わざわざ世間で騒がれてることをいちいち見に行くとは、お前も物好きだよぃ」
「あはは。
世間でさも当然と言われている事に、素直に納得できない質なんです。
それは他人の目から判断されたことでしょう?私が判断したことじゃない」
そこまで言ったは、ふぅ、と息を吐いた。
「だから、どんな危険があったとしても、どんな罠が待ち受けようとも私は知りたいんですよ」
「自分の命がどうなっても、かよぃ?」
「まさか。全ては命あっての物種です。
退き際が分からないような育てられ方はされてませんよ」
それまでとは打って変わった不敵な笑みが返される。
「今は海賊王関連の興味が一番強いので、自分の中で満足するまで調べ尽くすつもりですけど」
「その好奇心が強い事は構わねぇが、その手の罠に引っかからないことだよぃ」
「ふふ、私を誰だと思ってるんです?裏付けをしない情報にほいほいと飛び付きませんよ」
「だが、興味を取られりゃ警戒が薄くなる。油断はしねぇことだよぃ」
マルコの言葉にキョトンと驚き顔のは、ありがとうございます、と返した。
「ご忠告、胸に留め置きますよ」
そう、この時は留め置くと、しっかりそう思っていたはずだった。
2013.7.15
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