夜の帳。
海の上であるそこは、本来なら静かなところだ。
だが、今は違う。
「今日は大漁だ!」
「みんな飲め!歌え!騒げ!」
「ぎゃはははは!」
なぜならモビー・ディック号の甲板では、宴が催され、煌煌と明かりが瞬いているからだ。
ーーまだ言葉にしないーー
「おぅ、なんだよ〜。飲んでるかぁ」
「飲んでますよ〜、あ!サッチさんジョッキ空いてるじゃないですか!」
「おい、サッチ!に酌してもらうなんてずりぃぞ!」
「兄貴の特権だ、おめぇらは引っ込んでろ!」
ふんぞり返るサッチに、罵詈雑言が飛び交う。
だが、しばらくして・・・
「俺達、白ひげ海賊団に!」
「かんぱーい!!」
「・・・何がしてぇんだよい」
今までのやり取りが嘘のように、宴は盛大な笑いに包まれる。
そしてそんな騒ぎの間で、いつもより笑い転げる。
それを目に留めたマルコは飲みかけのジョッキを置き、立ち上がった。
「おい、大丈夫かよぃ」
「あは、マルコさ〜ん。飲んでますぅ〜」
「・・・酔ってるのかよぃ?」
「まっさかぁ〜、てんで酔ってませんぜv」
(「完全に酔っぱらいだよぃ」)
普段のような明るさが格段に上がっている。
これは早々に引っ込ませた方が無難だ。
そう判断したマルコは、の腕を引いた。
「ほら、立つんだよぃ」
「だ〜いじょぶです。一人でも歩けますってばよぉ〜」
「お前の部屋は反対だよぃ」
見当違いの方向へ歩いて行くの襟首を掴み、マルコは歩き出した。
マルコに支えられるように、は歩く。
その足元は全くと言っていいほど、心許ない。
酔っぱらいの千鳥足だ。
(「しょうがねぇぃ・・・」)
「お前な、弱いなら考えて飲めよぃ」
「弱くなぁいっす。一人で5樽は開けぜ、隊長ぉ〜」
「・・・単なる飲み過ぎかよぃ」
そんな体躯で何処に入るんだか。
だんだんとこちらに体重を預けてきたに、しっかりしろとばかりに肩を支え直す。
「いい加減に歩けよぃ」
「・・・ん〜、歩いてる〜」
「はぁ・・・」
呆れたようにため息をついたマルコは口を開いた。
「」
その言葉に、の肩がぴくりと動いた。
「水持ってくるから、ちょっとここで待ってーー」
から離れようとしたマルコだが、シャツを掴まれた事でその行動が止まる。
「なんだよぃ」
「えへへ、マルコさんが名前呼んでくれた〜」
「それがどうしたんだよぃ」
普段よりも表情を崩したが、へらと笑った。
「ちょっと、酔い覚ましに背中貸してくださいな」
毒気を抜くようなその笑顔に、マルコはため息一つ吐き出した。
「・・・少しだけだよぃ」
本当は酔ってなかった。
ただ、貴方に名前を呼んでほしかっただけ。
でも・・・
ーーまだ言葉にしないーー
偽物!? dreamだものいいじゃnーー(殴)!
2013.4.21
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