久々の島への上陸に、船員誰もが浮き足立っていた。
丸1ヶ月も海の上だったのだから、楽しみなのは分かる。
だが補給したり仕事を片付けたりとやらなければいけない事はたくさんある。

、お前は降りるのかよぃ」

陽光の下、薄茶の髪を潮風で揺らした女性は、肩越しにこっちを見た。

「そうですね、折角なのでそうするつもりです」

マルコさんは?と逆に聞き返され、買い出しだと答えればなるほどと明るい声が返る。

「1番隊がお仕事ってことは、船番は誰なんですか?」
「今日はサッチんとこだよぃ」
「ふふっ、サッチさん悔しがってるでしょうね」

からからと弾む声が響く。
確かに、当人からは代わってくれと縋り付かれたが、先ほど一蹴してきたところだ。

「お前、仕事はいいのかよぃ」
「凪風のですか?
う〜ん・・・この島で収穫はなさそうな気がするんですよね」

すっと島を見渡したロイヤルブルーの瞳がこちらに向けられる。
覇気を使ったのだろう。
彼女がそう言うのなら、外れた試しはない。
それなら、とマルコは口を開いた。

「だったら、買い出しの手伝いを頼むよぃ」
「私のギャランティは高いですよ?」
「・・・・・・」

素早い切り返しに、マルコは固まる。
が、すぐに冗談ですよ、とが返し二人は船を降りはじめた。










































































ーーWhite Dayーー











































































「白ひげさんの薬、薬草各種、日用品っと・・・これで全部ですね」

手元のメモ書きを読み上げたに、マルコは頷いた。

「それにしても、結構な量になりましたね」
「本当だよぃ」

マルコの両手に抱えた紙袋と、が持っている紙袋にはぎっしりと品物が詰まっている。

「この辺で飯にでもするかねぃ」
「そうですね・・・」

何処にしましょうか、とキョロキョロと辺りを見回すに合わせて髪が踊る。
きらきらと光を浮けるそれに、視線が捕われる。
自分より視線の低いそれを眺めていたマルコは、こちらを見つめる瞳にはたっと意識を戻した。

「どうしたんですか?」
「・・・何でもねえよぃ」
「?」

ふいと顔を背けたマルコに疑問符を浮かべただったが、先に進んだ背中を追い歩きだした。




































































手近な店で食事を済ませ、後は帰るだけだ。
出店が建ち並ぶ中、並んで歩いているとふとがある店の前で立ち止まった。

「わぉ、凝った髪留め」

そこは小物屋らしく、数多くの品々が並んでいた。
言われた言葉通り、確かに質のいいものだ。
だが日頃から着飾る事をしないが、このような店に興味があるとは・・・

(「一応、女ってことかねぃ」)
「今、失礼なこと思ってません?」

心情を突かれた言葉に、マルコは明後日の方向を向く。
暗にそれが肯定と思われるが、情報屋である彼女の事だ。すでに見抜いているだろう。
心外だという表情を見せていただったが、興味は手元へと戻る。

「へぇ〜、職人技ですね」
「お!姉さんお目が高い!そっちの彼氏にでも買ってもらいな!」
「「へ?」」

店員からの言葉に二人の視線は交差した。
はたからはそう見られていたらしい。
はどう言ったものかと迷った。
その時、


「は、はい!」

思わず口ごもってしまったが、当のマルコはいつも通り、ポーカーフェイスだ。
それを見たは面白くなさそうにむっと表情が曇る。

「いつもはどんなのをつけてんだよぃ」
「え?」
「髪留めだよぃ」
「あぁ・・・と、これですよ」

結っていた髪を解いて見せられたのはシンプルなシルバーの二又簪。
彼女らしいシンプルで実用的なものだ。
それを見たマルコは手近にあった同じ形の物を手に取った。
職人の細工が施されているそれは、ウォーターサファイアが散りばめられていた。

「これをもらうよぃ」
「えぇ!マ、マルコさん!そんな高価なものいいですよ!」

抗議の声を上げるが、向こうは全く取り合わない。
そうこうしている間に、店員が威勢のいい毎度どうも!という声が響く。

「ほれ、手をだせよぃ」
「あ、はい」

手の平に置かれたのは、先ほどマルコが買った品だ。

「どうして・・・」
「・・・この間のお返しだよぃ」
「でも、これじゃあ貰い過ぎですよ」
「今日付き合ってもらった礼もだよぃ」

そこまで言われてしまうと、断りきれない。
手元の品を握ったは、視線を上げた。

「ありがとう、ございます」

はにかむような笑顔に、マルコは目を見張った。
そしてその目元が柔らかく細められる。

「こちらこそだよぃ」




































































ーー素直に言えない気持ちを色に込めてーー














































>余談1
「お!、髪留め変えたのか?」
「そうなんですよ〜。似合います、サッチさん?」
「おぅ!美人が引き立つな。どうしたんだそれ?」
「初めての愛を捧げられたんです」
「何ぃっー!!」

>余談2
「なぁマルコ」
「なんだよぃ」
「どうしてウォーターサファイアを選んだんだ?」
「深い意味はねぇよぃ」
「お前、その宝石の意味知ってんのか?」
「は?」
「・・・いや、なんでもねえよ」





2013.4.21

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