ーー手がかかるからこそーー
冬島に近づいているせいか、最近一気に冷え込んだ。
そんな時に見回りに出る事になったマルコ。
気を付けろよ、と言えば片手を挙げて応じられた。
まぁ、奴なら心配する必要もない。
ただ、身体を冷やして帰ってくるだろうから、最近手に入ったラム酒をスキットルに入れ渡してやろうと思った。
と、立ち去って行くその後ろ姿を、が目で追っている事に気が付いた。
我が妹と、可愛がっているだけにその行動の意味に気付かないほど朴念仁ではない。
ここは間を取り持つのが、兄としての務めだ。
すぐにを呼び止め、不思議そうな顔を向ける我が妹の手にスキットルを乗せた。
「私が、ですか?」
「そ、マルコの奴が身体冷やして帰ってくるだろうから、渡してやってくれ」
「そんなの、食堂に戻られてからでも・・・」
怪訝そうに言うに、いいからいいから、と俺はその背中を外に押し出した。
「あ、ちゃんと暖かくして行くんだぞ」
そう言って、毛布を被せて送り出す。
風邪でもひかれてしまうのは忍びない。
不審気な表情が晴れなかったが、諦めたのかは外へと出て行った。
(「あ、でも看病ができるのも兄としての役得か・・・?」)
いやいや、そんなことはいかん。
邪心を起こした事は秘密にしておこう。
自分の思惑が良い方向に運ぶ事を願いながら、俺は自分の席に戻った。
暫くして、が帰って来た。
だが、一人だったことを不思議に思い、何でもない風を装って近づいた。
「おう、。マルコには渡せたか?」
「渡しましたよ、ちゃんと」
よしよし、思惑通りだ。
「そうかそうか。で?何て言って渡したんだ?」
「何てって・・・サッチさんからの差し入れってですけど?」
届いた言葉を理解するのに、タイムラグが生じた。
そして、それを発した我が妹に、思わず疑問符が飛び出した。
「は?」
「え?」
互いの疑問の声に、お互いポカンと見つめ合う。
そして、自分の方が早く立ち直ったことで、に言い募った。
「おま、お前・・・そこは違うだろ?」
「?何か違ってます?」
おいおい、凪風なんて凄腕の情報屋をやっているはずなんじゃないのか?
物事の先読みは彼女の得意分野。
他人の機微に敏感なのだから、それは自身にも適用されるだろう。
そう思ったから、あんな単純な一計を案じ絶対に上手くいくと思っていたのだが・・・
「、お前いくつだ?」
「女性に歳を聞くなんて失礼ですよ」
「サッチ兄さんはいいの」
「・・・19ですけど」
「うん、もうちょっと頑張ろうな」
ポンポンと、頭を撫でる。
そんな俺の言葉に、大量の疑問符を頭上に浮かべた我が妹は言った。
「何をですか?」
>余談
「サッチ兄さん、お前の将来が不安だ」
「大丈夫ですよ。これでも鍛えてますから」
「・・・そうか」(遠い目)
2013.7.15
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