ーー衝突 6ーー







































































翌朝。
は海岸にほど近い所を歩いていた。
事情を話してこい、とサッチに言われた だが、鉛でもついているかのように足が重い。
このまま探し人が見つからなければ良いとも思ってる。
何しろ気が進まな過ぎる。
かと言って逃げるのは癪だし、ウィルのこともある。

(「ここは、割り切るしかない、か・・・」)

そう思って、角を曲がった。
その時、

ーードンッ!ーー
「わっ!」
「と!」

どうやら人とぶつかったらしい。
考え事をしていて、気もそぞろだったとはいえ情けない。
ますます気分が沈む。

「すみまーー!」
「・・・・・・」

まさか、考え事をしていた当人と鉢合わせてしまうとは。
一気に空気が重くのしかかる。
しかし、こちらの気持ちを他所に、マルコは歩き出してしまった。
慌てた はその背中を呼び止める。

「マ、マルコさん!」

振り返るが返ってきたのは無言。
何の用だ、とばかりに鋭い視線で問われる。
ここまできたら腹を括るしかない。

「昨日は・・・すみません、でした」
「弁解でもする気かよぃ」

冷めた声にカチン、とくるがここはガマンだ。

「あの時は、ちょっと余裕がなくて・・・」
「余裕?どういうことだよぃ?」

昨夜とは逆に、マルコが突っ込んでくる。
だが、出来ればこの先は話したくない。

「あの・・・ここからは身の上話になるので、ちょっとーー」
「話せよぃ」

命令かよ!と、内心で叫ぶ。
だが、もう仕方ない、と開き直りため息を吐く
他言しないでくださいね、と前置きし は話し始める。

「私、レイリーに拾われた以前の記憶がないんです」
「!」

マルコは初めて表情を変えた。
サッチの時もそうだったので、 の方は慣れたもの。
まぁ、話の切り口にしては重い話であることに変わりはない。

「恐らくその影響だと思うんですが、夜がちょっと・・・」

苦手なんです、と尻窄みに言えば、マルコは徐々に驚きから立ち直った。

「お前、今までーー」
「ああ、すみません。
言葉が悪かったですね。
どちらかというと、『暗闇』が、です」

苦笑して訂正した
その様子にマルコは神妙な顔に変わる。

「どうにかしようにも記憶がないので、原因も分からずじまいでして・・・
ただ、漠然とーー」

































































「嫌なんです」
































































そう言って、口を閉じた
そして、視線を外していた はこちらを見ているだろう1番隊隊長に向いた。

「だから、新月が前後する日はちょっとピリピリしてしまって。
そして、ちょうどその日にーー」

昨日のようなことに、と続けた
それまで黙って話を聞いていたマルコは話し出そうとするが、それを遮るように、 は続ける。

「言い訳に聞こえたなら、それでも構いません。
マルコさんの言い分が正しいですから。
ただ、事情を話すぐらいはしてこいと、サッチさんから言われて・・・」
「サッチは知ってたのかよぃ」
「・・・先月、かなり不本意な形でバレました」

大変、不本意だと苦虫を噛み潰したような顔の
それを受けたマルコは、僅かに眉根を寄せる。
そして、

「身体は大丈夫なのかよぃ」
「以前ほど酷くはなくなりまし、2,3日寝なくても問題ないですから」

の言葉にマルコはため息を零す。
それに不審気な顔になる だが、問う前にマルコに手を引かれる。
着いたのは近くの樹の下のベンチ。
先に腰を下ろしたマルコに、 はどうしたら良いものか迷う。

「あの・・・」
「ぶっ倒れても迷惑だよぃ」
「大丈夫ですよ、仮眠は取ってますし」
「責任取ってもらうと、言ったはずだよぃ」

そう言って、隣のスペースを指差すマルコ。
その行動にようやく意味を察した だが、果たしてこれが責任になるのだろうか?

「これが?」

胡乱気にそう言えば、マルコはそうだとばかりな態度。

「でも、出航時間がーー」
「昼過ぎまで時間はあるよぃ」
「でも、これじゃあーー」
「つべこべ言うな」
「ぅわっ!」

グイッと腕を引かれ、ベンチの隣へ。
そして、そのままその大きな手で目元を隠され、上体を倒された。
打ち付けた背中が痛い。
そう文句を言ってやろうとした時、

「隊長命令だよぃ」

耳に届いた声が柔らかかったことに、その文句を飲み込む。
潮騒の中、覆われた指の隙間から漏れる薄い光。
最近、ろくに寝ていなかったことと、人肌の温もりが夢殿に誘う。

(「まぁ、いっか・・・」)

これで責任が取れるなら、ウィルの件も問題ない。
マルコの思惑に分からないこともあるが、今はこの時間を有効に使おうと、 は微睡みに落ちた。














































>余談
「サッチさん、今回はありがとうございました」
「仲直りできて良かったじゃねぇか」
「まぁ、ウィルの計画がお釈迦にならなかったことは良かったですよ」
「そんなことよりよ、マルコに膝枕でもしてもらったのか?」
「まさか、固くて寝れたもんじゃありませんよ」
「あ・・・そう」





甘さ?なにそれ?


2013.7.15

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