「姉さん!あんな言い方じゃ、姉さんが悪ものですよ。
本当はおれが・・・」
「いいのよ。単独行動したのは間違ってないし、マルコさんの言う通りなんだから」






































































ーー衝突 4ーー






































































宿屋に戻り、開口一番ウィルが声を上げるが、は取り合わなかった。
しかし、そう言われてもウィルの方は納得できず、食い下がる。

「けど・・・」
「言ったでしょ?貴方は自分の事を考えてればいいの。
こういう責任云々は、取れる人が取るべきものなんだから」

こう言われてしまっては、ウィルは何も言えない。
ソファに沈んでいたは、パタンと読みかけの本を閉じる。
そして腰を上げ、詰め寄っていたウィルの頭にポンと手を置いた。

「さぁ、夜も遅いわ。早く寝なさい」
「うっす・・・姉さんは寝ないっすか?」

そう問われれば、は薄く笑った。

「私、ちょっと外の空気吸ってくるわ」

そう言って、は部屋を出ていた。
見送ったウィルだが、先ほどの事が気に掛かって眠る気など起きない。

(「おれのせいで、姉さんは船を・・・」)

そのまま部屋にいても、悪い考えしか出ない。
でも、こんな夜更けに外には出れない。
仕方なくウィルは気分転換にフロントへ降りた。
すると、そこにはあの現場にいたサッチと鉢合わせになった。

「おお、ウィル!ここだったか!探したぜ〜」
「サ、サッチたいちょぉ〜」

陽気な顏を見た途端、いろんな感情が込み上げた。
安堵、後悔、悔しさ、不安・・・
だが、隊長の前で泣くものかと必死で我慢する。
すると、サッチは安心させるように、小さな頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「男だろ、んな顔するな。事情を聞きに来たんだ、俺は」

その言葉に、ウィルの肩がピクリと動く。思い出されるのはつい先程の事。
が責任を取る、もしかしたら船も下りるかもしれない。
そいうことならば自分が何かを言えば少なからず影響が出るという事なのだろうか?
不安に駆られ、ウィルは口を噤む。
が、それを読んでいたようなサッチは、再びウィルの頭に手を置いた。

「心配すんな、俺はマルコにもにも言わねぇよ」
「でも・・・」
「悪い様にはしねぇから、信用しろって。話してみな、一体、何があったんだ?」

サッチの言葉に、ウィルはゆっくりと話し出す。
出だしこそたどたどしかったが、徐々に口調は早くなる。
一通り話を聞き終えたサッチは、ようやく納得できた様に深く頷いた。

「なるほどなぁ・・・」
「ごめんなさいっす。おれが、わがままなことしたから・・・」

自分でそう言えば、さらに涙が溢れる。
そんなウィルの頭をガシガシと頭を撫でたサッチは、

「お前は悪くねぇよ。そういや、今夜は新月だったか・・・
タイミングの悪さも併さってたんだ、仕方ねえさ」

苦笑するサッチに、ウィルは首を傾げた。

「新月が何か、かんけいあるっすか?」
「ああ、こっちの話しだ、気にすんな。
さて、問題はあいつらか・・・」

どうしたもんかねぇ、あの二人と呟くサッチ。
その言葉にウィルは殊更、思い詰めた表情になる。

「サッチ隊長、姉さんが罰受けるなんてまちがってますよ。
おれがーー」
「あーあー、だから大丈夫なようにすっから」

幼い少年を安心させるようにサッチは笑った。













































2013.7.15

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