ーー芽生えた信頼 6ーー







































































空からサッチらの姿を探すマルコ。
から聞かされた話を考えると、目印となる手掛かりはあるはずだった。
だが、それらしいモノが見つからず、ジワジワと焦燥が募る。

(「サッチの野郎、とんだもんを掴まされたよい・・・」)

正確には彼の部下が、だがそこは隊長責任だ。
ひとまず、責任追求は後にするとして、まずはその姿を見つけなければ話にならない。
しかし、焦りは目を曇らせるものだ。
マルコは落ち着かせるように、飛び立つ前のの話を思い返した。



『これだけ同じ方法で海賊を捕まえているなら、場所もそうは移動しないはずです。
なら爆破したとしても、不自然にならないものと考えられます。
つまり・・・瓦礫になっても疑う者が少ない、岩場。
そして、その近くにある洞窟が怪しいと私は考えます』



空をゆっくりと旋回する。
と、ようやくそれらしい場所を見つけた。
木々に隠れて見えにくかったが、そこは確かに切り立った岩肌に口を開けていた洞窟だった。
すぐに降り立てば洞窟の前にはすでに多くの足跡。
一歩遅かったか、とマルコは歯噛みした。
と、

「マルコ!やっぱり来たかったんじゃねぇか〜
素直じゃねぇ奴だな〜」

こっちの心配などお構い無しの能天気さ。
思わず、ため息が漏れた。

「サッチ、隊の奴等は全員無事かよぃ?」
「は?何言ってんだ?」
「財宝は海軍の罠だよぃ。さっさと引きかーー」
「見つけたぞ!海賊だ!!」

ついに海兵に見つかった。
このまま力押しもできるが、土地勘がないこちらは分が悪い。
何より、今日サッチは若い部下も連れていた。
戦闘経験の少ない彼らに、この戦いは厳しいだろう。

「お前ら逃げろ、ここは俺とマルコでなんとかする!」
「でも、サッチ隊長!逃げ道は海軍に・・・」
「あぁ、くそっ!」

サッチが悪態をついた。
その時、

「マルコ隊長!加勢にきやした!」

船から呼んでいた5人の姿。
これでここからの脱出はどうにかいくだろう。
だが、あと一人の姿がなかった。

「おい、あいつは・・・」
「逃がすな!少人数でも能力者がいる可能性もある!」
「全員でかかれ!」
「「「おおっー!!」」」

海兵が押し寄せて来たことで、マルコは続きを口にできなかった。
鬱蒼としたこの場所では、得意の上空戦は無理だ。
手練れの5人に、サッチの部下を任せ、マルコはこちらを取り囲む敵と向かい合った。

(「面倒だよぃ・・・」)

海兵を倒しながら内心で毒を吐く。

ーーパンッ!ーー

乾いた音が響き、銃まで持ち出して来たかと渋面を作る。
しかし、その音で倒れたのは離れた場所にいる海兵だった。
同士討ちか、と不審に思っていた時。
一人の海兵が、部下に気を取られているサッチを狙っていた。
寸前でマルコが気付くが、そこからでは見ていることしかできない。

「サッチ!!」

焦る声と、引鉄が引かれたのは同時だった。

ーーパァンッ!ーー
ーーキーンッ!ーー

だが、その凶弾は新たな介入者によって阻まれた。

「差し出がましいと思いましたが、ご容赦願いますよ」

戦いの場に響く、場違いな女の声。
サッチの背後に小柄な影があった。
翻るマントに、マルコは肩の力を抜く。

「ナイスフォローだぜ、 !」
「ご無事で何よりです」

背中合わせで会話をする二人は、襲って来る海兵を捌いていく。

「おいおい、これで無事かよ」
「ホントはもっと危機的状況になってもおかしくなかったんですよ。
マルコさんに感謝してくださいね」

へーへーと、サッチは気のない返事。
両手の愛剣を振るいながら、サッチは自分と同じように剣を振るうと話を続けた。

「にしても、その刀使えたんだな?いつもは得物使わねぇだろ?」
「加減ができないので、雷切はなるべく使いたくないんですが・・・
向こうが飛び道具なので致し方なくです、よっと!」

襲いかかってきた海兵の一人に峰打ちを喰らわせ、昏倒させる。
そして、キョロキョロと辺りを見回したはサッチさん、と呼んだ。

「皆さん無事に離れたようですし、そろそろお暇しましょう」
「お暇って・・・こう囲まれちゃあ、なぁ・・・」

ひょいっ、と海兵に足を引っ掛けたサッチは難しい顔になる。
そんな顔が分かっているかのように、は楽しげに笑った。

「そこは任せてください。
合図したら、一斉に森にお願いします。絶対、振り返らないでくださいね」

そう言い置き、の気配が背後から離れる。
マルコの元へ駆け寄ったは同じ事を伝え、再び海兵と斬り結んでいく。
そして、3人の距離が近くなった。
瞬間、

「お二人とも、いきますよ!」
ーードーーーン!ーー

辺りに煙幕が張られる。
合図に併せ、3人は一斉に森へと走り出した。
が、

「海賊共が逃げたぞ!」
「追え、逃がすな!」

海兵達はすぐに立て直した。
そして土地勘のある優位差か、耳に届く指示はどれも的確だった。

「おいおい、まだ海兵の奴等、追っかけてくるぞ」
「・・・話が違うじゃねぇかよぃ」

並んで逃走中のサッチとマルコから、この作戦を立てた人物に非難が集中する。
が、その当人は余裕な態度を崩さない。

「大丈夫です、そろそろーー」
『総員、戦闘中止!直ちに本部へ戻れ!』

を遮るように、戦場に指示が飛ぶ。その声に、海兵の足が止まった。
そして、戦場に転がった電伝虫に指揮官らしい男が言い募った。

「しかし、海賊共がまだ・・・」
『支部が火事だ!それどころではない!』
「なっ!?」
「中尉、どうしましょう?」
「・・・ちっ!海賊共は捨て置く。至急、応援に向かうぞ!」
「「「はっ!」」」

どんどん海兵は離れていく。
先ほど非難していたサッチとマルコは遠巻きにそれを見、呆気に取られていた。

「いや〜、危機一髪でしたねぇ〜」

出てもいない汗を拭うは楽しげに言った。
そして、海兵らの去った方向を見たまま動かない二人へ声をかける。

「サッチさん、マルコさん。早く帰りましょう〜」
「そうだな、帰るか・・・って、違ぁーうっ!!
「何ですか、急に?」
「何やったんだ!?こんなタイミングでうまい具合に火事なんてーー」
「火事なんて?」
「普通、起こるわけ・・・!」
「・・・まさか・・・」

一人で盛り上がっていたサッチと、事態を察したようなマルコの視線が交差する。
そして、二対の視線がニコニコと笑っているに向いた。

「そうなんです。だから、バレる前に船に戻りましょ?」
「デマなのか」
「デマかよぃ」

ダブルの突っ込みに、は当たり前だとばかりに肩を竦めた。

「向こうは仕事で海賊捕まえてるだけですから。
ちょっと、仕事の手を止めさせてもらっただけです」

後で調べられて顔がバレるのも嫌ですから、とは歩き出す。
その背中を二人の男が見つめる。兎にも角にも、危機は脱した。
それは、目の前を歩く者の功績である事は間違いない。

「マルコ」
「なんだよぃ」
「今回は助かった」
「礼を言う相手違いだよぃ」
「は?だって、は・・・」
「サッチが危ねぇって言われたから、俺は付き合っただけだよぃ」

マルコの言葉に、サッチは少し遠くなった姿を見た。
普段はこっちが構って、仕方なしに付き合ってやっている風な彼女。
それが、ここに至るまで必死になって助けに来てくれたという。
仲間にはならないと言っていたが、これは十分その証になるものではないだろうか?
と、そのが振り返る。

「置いてっちゃいますよ〜?」
「お前が仕切るなよぃ」
「だって、海軍に追いつかれるのは癪じゃないですか〜」
「うるせぇよぃ」

文句を返しながら歩き出すマルコ。
その後を追うように、サッチも歩き出した。

「おいマルコ!我が妹を馬鹿にするとは何事か!!」

嬉しさと喜びを噛み締めて。













































>余談
!今回は助かったぜ、ありがとな!」
「可愛い妹の役割を果たしただけですよ、サッチ兄さん?」
「い、妹よぉ!!」
「ちょっ!抱きつかないでください・・・よっ!」
ーードスッ!ーー
「ぐはっ!」
「もう・・・」
「・・・そ、それよりマルコが能力使おうとした時、側にいたか?」
「?はい、下からは任せると言われましたけど」
「ふ〜ん・・・」
「サッチさん?」





2013.7.15

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