ーー幕開けのobertureーー
甲板から欄干に寄り掛かって海を眺めていた。
島の気候域に入った為か、海は穏やかで潮風も気持ち良い。
今日もまた、新たな一日が始まる。
そう思っていた時。
ーーゾクッーー
「!」
背後に感じた嫌な気配に、はすぐにソレと距離を取った。
普段は抜かない愛剣の柄まで手を伸ばす。
そしてすぐに応戦できるよう構える。
と、
「ゼハハハハ!驚かせちまったか?」
響いた笑い声。
だが、随分とこちらの神経を逆撫でするような嗤い方だ。
「・・・いえ」
掴んでいた柄から手を離す。
対峙した事によって、相手の姿をはっきりと見た。
黒いバンダナ、隙っ歯にビール樽のような腹。
自分の倍以上ある大男だ。
「アンタがこの船に乗り込んで来たっていう、物好きな女か?」
「はい。白ひげさんからの許可は頂きました」
「おう、聞いてるぜ」
一見すれば、穏やかなやり取り。
だが、は不可解な嫌悪感が収まらない。
焦燥感とも言える。
この男、危険だ。
近くに居たくない。
「名乗るのが遅れたな、俺はーー」
ニヤリと笑うその様が、こちらを舐め回すように見ているようで吐き気がする。
「黒髭だ。ティーチって呼んでくれ」
2013.7.15
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