世界中を見て回ると、必ず荒事に出くわすことになる。
それは、まさしく今のような状態で・・・
「てめぇ、女だからって舐めた態度してんなよ?」
「オヤジが認めたからって、我が物顔されちゃあたまらねぇぜ」
白ひげ海賊団の若い船員が口々に言う。
だからといって、怯えているわけでも逃げようとも思わない。
それが余計に彼らの気に障っているのだろうが・・・
ーーYou are Piratesーー
(「どうしよっかなぁ・・・」)
これから書庫に入ろうと、断りを貰いに行く途中でこの状況になった。
この船、モビー・ディック号の滞在の許可は、船長である白ひげからもらっている。
だからとやかく言われる筋合いはないのだが、ひょっこり来た訳の分からない輩が同じ船に乗っているのは虫が好かないのだろう。
「おい、何とか言え!」
船員の一人が掴みかかろうとした時、ようやくが動いた。
ーーパシッーー
「腕試しでもしましょうか?」
これ以上、煽らないように微笑を浮かべたは提案を述べる。
そちらがどんな考えがあろうと、こちらも譲るつもりはなかった。
難なく拳を受け止められた男は、言われた言葉に疑問符を浮かべた。
「海賊最強と謳われている船に乗せていただいているんです。
貴方方、息子さん達が誇り高いのも分かります」
「だから何だってんだ!」
「だから、私がこの船に乗るのに相応しい腕があれば文句はないですよね?」
だから、腕試しでもと。
そう言ったはにっこりと笑う。
だが、そんな対応でも向こうはお気に召さないようで・・・
「すかした態度取りやがって!」
「そんなつもりはないですよ。妥協策です」
「この女!ふざけんのもいい加減にーー」
「おい、何の騒ぎだよぃ」
騒動を聞きつけたのか、そこへ1番隊隊長のマルコがやって来た。
そして、自分の周りを取り囲む若い船員を見、状況を察したようだった。
「一応そいつはオヤジが乗せるのを許可した奴だよぃ」
「でも、客人だとは言われてませんよ?」
渦中の発言に、マルコだけでなく周りの船員も怪訝な顔をした。
乗せていただいてこう言うのもなんですが、と前置きしたは続ける。
「得体の知れない輩が同じ船に乗っているんです。
いくら船長が許可したとは言え、他の方々が、はいそーですか、とはいかないと思ってました」
「どうするつもりだよぃ」
マルコの言葉に、は口角を上げた。
「もちろん」
そう言って、こちらを取り囲んでいた若い船員に向き直る。
「実力を目にすれば、文句はないですよね?
折角、1番隊隊長さんもいらっしゃいますので、立ち会っていただければ納得でしょう?」
それを聞いた若い船員達は顔を見合わせ、企み顏で笑った。
「ああ、いいぜ」
「後悔させてやる」
「負けたらこの船を出ていってもらうからな」
「ええ、構いません。
私が勝ったら今後、こういうことは止めてくださいね」
話はついたと、若い船員達は広い甲板へと歩き出す。
も続こうとしたが、あ、とマルコに振り返った。
「あの、マルコさん。書庫に入りたいんですが、構いませんか?」
「・・・彼奴らに勝ってから言えよぃ」
素っ気ない返答に、は分かりました、と笑う。
「では、ちょっとの間、お付き合いさせてしまいますが・・・」
「せいぜい足を掬われねぇことだよぃ」
皮肉るように言ってやっても、は態度を変えることなく笑った。
「ええ。
私は誰を相手にしているか、分かっているつもりですよ」
>余談
「・・・すげぇな、こりゃ」
「大の男共が、情けねぇなりだよぃ」
「マルコさ〜ん、約束通り、書庫行ってもいいですか?」
さん、若い衆に圧勝。
2013.7.15
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