「ガープさん、聞きましたよ〜。
かわいい新兵をお付きにしてるって」
「ぶわっはっはっは!お前にはやらんぞ!」







































































ーー目、付けられちゃいました?ーー







































































今日もお茶汲みの日が始まった。
海軍本部にいるというのに、こんなのでいいのだろうか?
まぁ、楽しいからいいんだが・・・

「中将〜、お茶が入りましたよ〜」
「おう、 !茶ぁ、もう一杯追加じゃ!」
「持って来てま〜す」
「そりゃ、気が利くな!」

ガープの部屋に足を踏み入れたは、こちらに背を向ける天パの男に僅かに背を伸ばす。
そして、何事もない風にガープとその男の前に湯呑みを置いた。

「あらら、随分と可愛いらしい子じゃないの。
お嬢さん、お名前は?」
「こんなところでナンパしてるお暇がございますか?
先ほど、つる中将が探しておいででしたよ?」

盆を抱え、見下ろす形でその男に答える。
海軍本部最高戦力。そう称される3人のうちの一人。
ヒエヒエの実の能力者。大将青雉ことクザン。
マイペースでいい加減な男だからといって、油断はできない。
そう、油断はーー

「いいじゃないの。息抜きも職務を遂行するには重要よ〜
それより、今夜ヒマ?食事でもどうよ?てか、ちゃんて呼んでいいかな?」

ーーできない男、と思いたいが・・・
ただのスケベ親父じゃないか。
こんなのが大将だなんて、上に立つ者の人格ぐらい考えないのか、海軍は。

「・・・ガープ中将、セクハラされた精神的苦痛からもうお茶を淹れる気力がありません」
「おい、クザン!貴様なんて事をしてくれるんじゃあ!」

あらら、すいませんねぇ、とへらへら笑うクザン。
だが、その目が笑っていないことに気付いた。

ちゃんはいつ本部に?」

突如、振られた質問にどうにか間を置かずに答える。

「はい、2ヶ月前です」
「ふ〜ん、そうなんだ」

そう惚けた口調の青雉だったが、その瞳が油断なくこちらを探っていることが分かった。
ここは一度、距離を置いた方が賢明か。

「ガープ中将、ボガードさんに渡す書類があるのでこれで失礼しますね」
「なんじゃ、ワシの茶ぁに付き合えんのか!?」
「代わりにクザン大将がいらっしゃるじゃないですか。
はい、お茶請けの堅焼き煎餅です」
「ん、行っていいぞ」

先ほどの渋りから手の平を返したガープに、は敬礼を返しその部屋を後にした。

































































廊下を歩きながら、は内心で苦虫を噛み潰していた。

(「ホント何考えてるのか読ませない人だな、あの人・・・
変な事言ったら、すぐにバレるかも」)
「ずいぶんと扱いうまいじゃないの〜、軍曹?」

背後から響いた声に思わず足が止まる。
振り返り、そこにいたのはーー

「クザン大将・・・」

今現在、自分の上司たる人と一緒にいるはずのこの男が、なぜここにいる?

「ガープ中将とお茶していたのでは?」
「んん?丁度いいタイミングでヒナちゃんが来てくれてね〜」
「ヒナ少佐ってば、災難ですね」

あの美しい顔が引き攣りながら、ガープの相手をしている姿が目に浮かぶ。
胸中で合掌したは、クザンに敬礼を取った。

「では、私はこの辺で・・・」
ちゃんてば、本当に海兵?」

いきなり核心をついてきた質問だが、は眉間にシワを寄せた表情で返した。
さも、不服だという顔で。

「随分、不躾なことを聞きますね。この格好が海兵に見えませんか?」
「ほらほら、それよ〜」
「は?」

どこかおかしいところがあるか?
そう思っていると、

「俺を目の前に、軍曹クラスがそんなに堂々としてるなんておかしいんじゃないの?」
「肝っ玉の大きさだけが自慢なんです」
「あらら、そうきたか〜」

う〜ん、と頭を掻いていたクザンは、「まぁ、いいや」と言おうとしていたことをやめた。
いや、気になるからそこは言っておこうよ。

「まぁ、この本部で変な騒ぎは起こさんことを勧めるよ」
「まるで私が変な騒ぎを起こすみたいな言い草ですね」

まだ気付いてないだろうに、そう言われる。
とぼけて返せば、いつの間に間合いを詰められたのか、男の手に首を捕らえられ、そのまま壁に叩きつけられた。

ーードンッ!ーー
「俺を舐めちゃいかんよ?」

背中を強か打った。
しかし、その痛みを無視して目の前の男から視線を逸らすことはしない。

「ガープさんには世話になっててね」
「若かりし海兵時代に、ですか?」

中将から聞いたことを言えば、男の視線が鋭くなった。

「これでも敬意を払ってんのよ。
だからーー」
ーーパキッーー

首元が氷を押し付けられたように冷える。
恐らく、これがこの人の能力の一部・・・

「あの人に迷惑かけるようなら、容赦しないよ、俺は」

何ならここでやって見せようか?
と言葉にしていないのに、聞こえた気がした。
しかし首から氷の冷たさが離れる。
牽制だけで済んだ行動にはぽかんとした。
そして、思わずそれが言葉になる。

「意外ですね、貴方のような方がそんな事を仰る方だとは」

ほんと、びっくり、という態度のだったが、クザンはそうは受け取らなかったようだ。

「あらら、開き直った?」
「開き直ってませんよ。
私が言っているのは、大将ともあろう方は問答無用で手を下すだろうと思っていたんです」
「こりゃまた、とんだ偏見があったもんだ」

嫌そうに顔を歪めるクザン
と、

「約束しますよ」

まっすぐ、クザンの目を見つめ返しては言う。

「約束します。
ガープ中将にはご迷惑をおかけしません」

ゆっくりと繰り返した
その真意を読み取ろうと視線が交錯する。
だがその言葉が、真実そうだろうと判断したクザンは、の首から手を離した。

「まあ、そうしてくれ。
巷じゃ海軍支部に情報を盗み回ってる凪風なんて物好きがいちゃってね〜
いつ本部に来たっておかしくないだろうし」
「それは大変ですね」

他人事のように言ってやる。
むざむざ正体をバラすようなことは言ってやるものか。

「そんじゃね、ちゃ〜ん。
今度、デートしようね〜」
「謹んで辞退します」
「あらら、フラれちゃったよ」

後ろ手を振って歩き去るクザンに、は敬礼を返す。
そして、その姿が見えなくなったところで笑顔が曇った。

「参った・・・
あれは目、付けられちゃったよ」













































>余談
「おいクザン、最近にちょっかい出しとるそうじゃな」
「は?」
「貴様のような青二才にはやらん!」
「や、ちょ、誤解・・・ガープさん!?」
「喰らえ!拳・骨・隕石!!」
「勘弁してくださいよ〜!!」

(「ガープさんには迷惑かけてないもんね〜だ」)





2013.7.15

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