「ガープ中将って、ホントのおじいちゃんみたいです」

とある日の午後。
が呟きを受け、湯呑みを手にした老海兵の動きが止まった。







































































ーー家族ーー







































































ぶわっはっはっは!確かにそうじゃな!
そういや、お前は家族はどこにいるんじゃ?」

どこがツボだったのだろう?
盛大に笑うガープに問われ、は薄く笑いながら答えた。

「いないですよ?」

盆を抱え小首を傾げるに、ガープはピタリと笑いを止めた。
その様子に、少しは気遣っているのか、と思ったは補足するように続ける。

「この時代にはなんら珍しいことではないと思いますけど?」

それと、そういうのは調書を見てください、とは続ける。
まぁ、その調書も偽造させてもらってる訳だが。
この手の話は、嘘と事実を混ぜることでさらに真実味が増す。
ガープ中将が悪い人じゃないのは分かるが、こちらは目的がある。

「親の顔は覚えてませんし、育ってくれた人ももう・・・」
「そうじゃったか・・・悪いことを聞いたの」
「いえ、中将が気になさることでは。
代わりに中将のご家族のことを教えていただけませんか?お孫さんはいるんですか?」

憂いを帯びたようにそう言えば、ガープは復活したように話し出した。

「もちろんじゃ、今年で10歳になるかの。
ルフィーと言っての、最強の海兵にすべく修行させておるんじゃ」
「そうなんですか〜」
(「それは難儀な・・・」)

海軍の英雄たるこの人に最強と認められる強さを身に着けなければならないその孫に同情した。
だが、そんな者が海に出ればちょっとやそっとのことでは命を落とさないだろうとも思う。

「それにしても、孫のルフィーさんをガープ中将が面倒みてるんですね。
ご両親はどうされたんですか?」

この人に気遣いは無用だろうと、ずけずけと聞く。
すると、

「ルフィーの父親はとんだ放蕩息子での」
「・・・中将がおっしゃるとは、相当なんですね・・・」

何につけても自由奔放突飛なこの人に、その言葉を吐かせるとは。
というか、ガープが『放蕩』の意味を知っていたことにも驚いた。

「ドラゴンの阿呆に父親なんぞ務まらんからな」
「・・・・・・は?今、なんと・・・」

ハハハ、まさか、聞き違いだろう。
世の中には自分とそっくりな人間が3人いるという。
それなら同じ名前の奴ぐらいゴロゴロと・・・

「革命軍なんぞ率いおって、あのバカ息子が・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

そうか、家系から只者じゃないのか。
海軍の英雄として、世界にその名がとどろいているガープ中将。
その息子が世界政府が血眼で探している、革命軍を率いるリーダー、ドラゴンその人。

(「それにしても、アレの父親がこの人・・・」)

性格が全然似てない。
・・・いや、待てよ。
でもこの自己中心的な性格は確かに似通うものがあるかもしれない。

「あの僭越ながら、それは私なんかに言ってしまっていいレベルの話ではないのでは・・・?」
「おお、そうじゃった!じゃあ、今のナシ!」
「・・・それで取り消せたら、世は事もなしです、中将」

本気でなかったことにできると思っているのか?
ある意味恐ろしい人だ。
だからそんな家系になるのだろうか・・・
ん?孫がいるということは、ドラゴンの血も引いているということか!?

(「うわぁ、どんな子供なんだろう・・・」)

単純にするとあのドラゴンとガープを足して2で割った感じか。
底抜けな自己中俺様主義な子供なんだろうか?
それが海兵になって、上官になった日には・・・
部下に心底同情する。
が、そもそもそんな子が海兵になるのだろうか?
父親であるガープを見ても、その息子は海軍に入らなかった。
事もあろうに、それと敵対する革命軍を率いている。
そんな親の息子が、素直に海軍に入るとは思えないが・・・

「でも、上に立つ者の素質お持ちなんですね」

立ち位置は置いておくとして、海軍、革命軍を率いる立場にいるのだ。
ガープの孫というその子も、恐らくそんな存在になるのではないだろうか?

「そうじゃな!なんせ、最強の海兵になるんじゃからな!
ぶわっはっはっは!」

『家族』というものをよく理解できないだが、ガープが話す横顔が柔らかくなっている事に、こちらまで心穏やかな気持ちになった。












































>余談
「写真があったんじゃ。これがルフィーじゃ」
「うわぁ、かわい・・・い、ですね〜」
(「この子・・・」)
「で、その隣がエースじゃ」
「・・・へぇ〜」
(「あの時の悪がき3人組・・・世間は狭いわ・・・」)





2013.7.15

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