ーー差し伸べた手ーー
「、俺達の仲間になれよ〜」
「しつこいですよ、シャンクスさん。
私は海賊にはなりませんって、何度も言ってるじゃないですか」
あと、読書の邪魔しないでください、とは口を尖らせる。
そして、マストに背を預け、視線を再び手元に落とした。
だがシャンクスも退かずに続けた。
「レイリーさんの娘のお前に、怪我でもされるのが忍びないんだ。
俺の目が届くなら、どうにかできる」
「あはは、ご冗談を。
海賊、しかも四皇の中でも自由を求める方のお荷物になんて、なりたくないですよ」
シャンクスに視線を合わせるでもなく、は言う。
その手元では、静かに紙がめくられていく。
頑として譲らないに、シャンクスは問うた。
「どうして一人にこだわる?」
「気楽でいいんです。協調性もないので」
笑ってそう答えたに、シャンクスの手が伸びる。
そして、が読んでいた本を取り上げた。
「嘘だな」
深海を溶かし込んだ瞳を見据え、そう言えばはシャンクスと向き合うことになる。
本を取り上げられたことに抗議する色はなく、その顔には何が言いたいんです?とありありとあった。
「、偉大なる航路はお前の考えているほど甘くない。
今、生きてるのはただ運が良かっただけだ」
そう言えば、返ってきたのは再びの笑顔。
「ふふ、運も実力のうちって言うじゃなーー」
「」
ただ呼ばれただけ。
だのに、それは言外に黙らせる力を持っていた。
鋭く見据えるそれに、は視線を逸らせない。
「死ぬぞ」
肌にビリビリと覇気が刺さる。
四皇の覇王色の覇気を受けたなら、普通は気を失う。
だが、はそれを平然とやり過ごした。
そして、
「そんなつもりありませんよ」
返されたのは、柔らかい笑顔。
思ってもみなかった反応にシャンクスは面食らった。
「レイリーに拾ってもらい、ここまで育ててくれた恩義があります。
そうやすやすと、手放せません」
「なら、一人での航海は自殺行為だと分かるだろう?」
諌めるようなシャンクスに、は立ち上がった。
そして海に視線を投じたまま、こちらを見つめているだろうその人の名を呼んだ。
「シャンクスさん。私は見たいんだ、本当の世界を。
そして自分の生きる目的と意味を。別に死にたい訳じゃないよ」
「だったらーー」
「今は誰かに頼る時期じゃない。
どんなに危険だろうと、命を削ることになろうと、自分の力を見定める為でもあるから」
そう言ったは、クルリと振り返った。
「心配してくれて、ありがとね。
シャンクス」
とても嬉しそうな笑顔。
そして、初めて呼ばれた名にシャンクスは咄嗟に言葉が出なかった。
暫くして、シャンクスは深々と嘆息し頭を掻いた。
「参ったな・・・
お前を引き止めるには仲間や友達の仲じゃ無理ってことか・・・」
「?誰であろうと私を留めるなんて無理ですよ?」
>余談
「なぁ、。もう一度、名前呼んでくれ」
「はい?いつも呼んでるじゃないですか、シャンクスさん」
「ちげーよ!ほら、さっきみたく・・・」
「あ、ニュース・クーだ!一部くださ〜い」
「・・・新聞に、負けた・・・」
2013.7.15
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