陸に降りて、もうすぐ一週間。
毎日毎日、飽きる事なく宴会を続けているのが、この赤髪海賊団だ。
ま、そんな事は今に始まったことではないけれど・・・
そしてこの日、とある客人がこの一団を訪れ、私は紹介を受けていた。







































































ーーピンチヒッターーー







































































「おう、鷹の目!久しぶりだな〜。
紹介するぜ、新しく仲間になっただ」
(「だから、違うのに・・・」)

もう訂正するのも面倒で、ひとまずその客人に礼を返す。

「どうもはじめまして」
「ほう・・・」

目の前の客人は四皇と肩を並べる存在。
王下七武海『鷹の目』こと、ジュラキュール・ミホーク。
『世界最強の剣豪』
この称号を欲しいままにしているのが、目の前の男だ。
まるで獲物を見定めるような、異名である猛禽類特有の刃物のような視線。
心根が弱いだけでその意思を挫く力を持つ威圧感だ。
海に出る前から、噂は嫌と言うほど聞いていた。
この船に乗った時、会える確率が一番高いだろうとも思っていたが・・・

「貴様が紹介するということは、小物ではない、ということだな」
「だぁっはっはっは!当ったり前だろ!
はな、レイリーさんの娘なんだぞ!」
「ちょっと、シャンクスさん・・・」

どうして貴方がそんな自慢気に話すんだ。
恥ずかしさより、嫌な予感が先行する。
これまで自分で集めた情報と噂を併せれば、目の前のこの男の取る行動は絞られてくる。
沸いてくるのは良い方の予感とは正反対のもの。
そして、自分のこの嫌な予感の的中率が高いことは自覚済みだ。
そもそも、自分の中ではすでに結論が出ている。
経験談に基づいた揺るぎない真実。
七武海にはマトモな奴は居ない!

「なるほど、あの冥王に師事を受けたか・・・」
「いえ、私の専門は諜報です」

そら、言わんこっちゃない!
悪い予感ほど当たるのが世の常・・・
だが、今この時ぐらいは外れたって良いだろうに。
さらにこの後に続くセリフも何とな〜く分かる。
即座に否定したが、効果があるかどうか・・・
そして、さらに頭痛を増長させることが。
いつもはそんな気回しなど絶対しないくせに、今日に限ってかの船長殿はいつの間にか居なくなっている。
本気で要らぬ気遣いだ。

(「でも居たらいたで、余計なこと言われるかもしれなかったしな・・・」)

そうだ、物事は良い方向に考えよう。
だが今そう思っても、現状が変わるわけではない。
鷹の目は先ほどよりも、獰猛になった視線をこちらに向ける。

「ならばその腕前、試させて貰おう」
「うぇえっ!?嫌ですよ!
なんで世界最強の剣豪と一端の小娘が剣を交えなきゃいけないんですか!?
勝敗は見えてます!」

変な悲鳴を上げてしまったのは不可抗力だ。
まだ命は惜しい。
20年も生きていないのに、どうしてここで死に花を咲かせなくてはならないのだ!

「何、只の暇潰しには丁度いい」
「私が良くなーーって!ちょっと!!
間合いを詰めないでください!!」


なんて事を言いやがる、この男は!
赤髪との決闘の話は十分過ぎるほど聞いているのだ。
自分が相手になる訳がない。
助けを求めるように視線を巡らせる。
誰でもいい、鷹の目が興味を反られるような・・・
だが、それが全く期待できないことが分かった。
面白い余興と位置付けられてしまっているようで、赤髪の船員達はこちらとしっかりと距離を置いている。

「ちょっと!皆さん見捨てるんですか!」
「おぅ、!お前のダウンに3万ベリー賭けてるぞ!」
「いえ、賭けじゃなくてーー」
「こっちは初太刀で吹っ飛ぶのに5万ベリーだ!」
「だから、助けーー」
「俺らは傷物になるに、10万ベーー」
「刻みますよ?」

もはや賭けになっていない。
ドスを利かせた声で凄んでみても、見世物となっている今では笑われるだけ。
頼みの綱の副船長は、我関せずと、こちらに背中まで見せていた。
普段でさえ、そんなあからさまな隙を見せないのに!
あ、やばい。
本気で泣きたくなってきた。

「話は済んだな」
「済んでないし!相手になるとも言ってない!」
「行くぞ・・・」
「話を聞けよ、おい!」

かの王下七武海相手に、私も命知らずなことを口走る。
だが、こんな唯我独尊な奴に払うべき礼儀は持ち合わせていない。
それにこのまま状況に流されれば、殺られるのはこっち。
どうあっても逃げなければ!
何か、逃げられるような状況は・・・

「お?なんだ、随分騒がしいことになってるじゃねぇか」

天の助け!
今、この瞬間だけは貴方を全力で大好きになります。
絶妙なタイミングで酒を持って現れた赤髪に、私はキラキラとした微笑みを向ける。
どうした?と首を傾げるシャンクスさんに、私は瞬きの勢いで距離を詰めた。
そして、素早く片手の酒を取り上げ、色香を漂わせた笑み(シャッキー仕込み)で赤髪の名を呼んだ。

「シャンクス・・・」
「お、おう!?」

肌が触れそうなほど、互いの距離は近い。
妖艶な笑みを向けられたシャンクスは徐々に動揺から立ち直り、男の顔になっていく。
そして、私は空いた手に自分の手を合わせた。

ーーポンッーー

小さな音。
その瞬間、先ほどの雰囲気をぶち壊すように、ニヤリと笑った。

「?」
「後は任せました」

そう言い捨て、今一番の安全地帯へ。
副船長の隣へ陣取り、嫌な顔をするベックマンに構わず、その片腕に縋り付いた。
鷹の目が帰るまで、絶対ここを動くものか!













































>余談
「・・・どういうことだ、鷹の目?」
「貴様、余計な事を・・・」
「おいおい、俺は何もやってねぇぞ。
つーか、むしろ被害者じゃねえか」





2013.7.15

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