ゴア王国中心街、端町に近い寂れたカフェテラス。
テーブルクロスがかけられた席に座り、頬杖を付く女が一人。

「ここが東の海で一番美しい国、かぁ・・・」

からからと回したマドラーを置き、一つのため息が響く。

「まぁ、確かに『街』はキレイだけどーー」

そう言って、はソーサを傾け、ここに至るまでを振り返る。



 『すみません、近くにカフェはありませんか?』
 『見ない顔だが、よそ者か?』
 『はい、観光客です』
 『そんな小汚い格好で街をうろつかないでくれたまえ』
 『はい?』
 『街の品位が下がる』



(「人のレベルは最低・・・」)

世間的には外観もすばらしく、治安も良好、ゴミ一つない国。
まさに理想郷。

(「ヤだなぁ・・・心が荒むぅ」)

本当にそんな国があるのかと、来てみればこれだ。
対応した輩が貴族だからとはいえ、他の街の住民も似たり寄ったりだった。

(「海軍支部から情報貰ってさっさと違うとこ、行こうかなぁ・・・」)
「いたぞ!またあの悪ガキ3人組だ!!」

なんだ、と騒ぎの方向を見れば土煙。
煙越しに見えるのは、怒りの形相の大人達。
そして、先頭を走るのはーー

「子供?」

それも3人。
鉄パイプを手に、凄い勢いで追随を引き離している。
どうやら追いかけられているらしい。
事情は分からないし、関わりを持つ謂れもない。

「でも、まぁ・・・心の潤い補充といきますか」

そう呟いたは立ち上がった。








































































ーー荒みの中のオアシスーー








































































「たすかったよ、ねーちゃん!あんがとな!」
「まったくだ!な、兄弟?」
「けっ、よけいなお世話だ」

カフェテラスには3つの椅子が増えていた。
そしての前には小さな子供が3人。
気まぐれから助けてみたはものの、どうやら厄介事をやってのけたのはこの子達のようだ。

「それにしても無銭飲食して逃げてたとはね・・・」
「ちがうぞ!たからばらいっていってきた!」

麦わら帽子をかぶった男の子が声高に叫ぶ。
それにはにこりと笑う。

「そっかそっか〜。でも高町のお店は貴族証が必要って聞いたけど?」
「おぅ!それはオレがてにいれたんだぜ!」

ゴーグル付のシルクハットの男の子は得意気に胸を張る。
すごいすごい、と答えるはさきほどから言葉を発しない一人へと視線を落とした。

「私の顔に、何かついてる?」

小首を傾げるはふっと笑みを向ける。
しかし、そばかすの少年は鋭い視線を崩さない。

「てめえ、なんのつもりだ?」
「・・・・・・」

腕を組む小さな男の子。
その視線を真正面から受けても、は表情を変えることはない。

(「この歳で・・・」)

幼さに似合わない威圧感だ。
内心そう思いながら、先ほどの問いに答える。

「心の潤い補充をしたかっただけよ、気にしないで」
「は?」
「ま、ココアでもどうぞ」
「「「おう、悪いな」」」

カップに顔を埋める幼い3人。
その様子を微笑ましく見ていたは肩を震わせた。

「もう・・・・」

俯くに3人の子供が気付いた。

「どうしたねーちゃん!」
「はらへったのか!」
「ケガしたのか!?」

駆け寄る3人に、は声を絞り出す。

「うーー」
「「「う?」」」

疑問符を頭の上に並べる子供に、がばっとが抱きついた。

「潤いをありがとぉ〜!」
「「「のわぁーーー!」」」

























2013.7.15

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