「う〜ん、参った・・・」
とあるカフェテラス。
パラソルが立てられたその下で、聞いた者も気重になりそうなため息をつく者が一人いた。
ーー情報屋、始めましたーー
ため息つくと、幸せが逃げるというけど、これでいくつ逃げただろうか?
しかし、ため息もつきたくなるのだ。
なぜなら・・・
「一人旅って意外とお金かかるんだなぁ」
現在手元にあるのは、300万ベリー。
心許ない金額ではないのは、先ほど海軍に賞金首を引き渡したからだ。
「生死を問わずって割には結構、手数料引いてくれたよね・・・」
どうせ、お偉方の懐に入ってしまう金だろうに。
まぁ、あるだけマシ。
本当なら350万は固いと思っていたが仕方ない。
だが今以上のクラスを相手にするにはそれなりの準備が必要な訳で。
賞金稼ぎになりたくて海に出たわけではないので、必要に迫られなければしたくない。
もちろん、その前になんとかするつもりだが。
気ままに世界を見れればそれがいいのだが、如何せん、先立つ物かいつも足を引っ張ってくる。
(「うーん、そこまで命をかけなくて、いつも身軽にお金を作れる方法ないかなぁ・・・」)
これまでも何度か考えていた。
しかし、都合が良すぎる。
なら、どっちを捨てるか?
やはり世界を見るからには身軽か一番。
なら命をある程度かけることは覚悟して、仕事を考えると・・・
「まず、賞金稼ぎは除外〜」
手元の紙切れに様々な仕事をリストアップしていた最上段をペンで塗り潰す。
もともとそこまで肉体労働派ではない。
頭を使う方が好きだ。
何かないなかぁ、と考えていると、
「参った、これから大きな取引があるっていうのに、取引先の国がどうやら荒れているらしい」
「また反乱軍か?」
「あぁ、ったく。
ついてないぜ・・・」
商人同士らしい二人の男の会話。
なんとはなしに、その続きに聞き耳を立てる。
「どっかにいい取引先はないもんかねぇ」
「それがありゃぁ、他の奴も儲かってるだろうさ」
「そりゃそうだ。
はぁ、せめて事前にそういう情報分かってりゃ相手を変えたのによ〜」
「ははは!
海軍でもなきゃそんな情報掴んでねぇだろうさ」
だよなぁ、と男は頭を抱え、テーブルに突っ伏した。
そんな男達のやり取りに、は閃いた。
「これだ!」
興奮の余り、立ち上がる。
周囲から奇異の目で見られるが、本人は何処吹く風だ。
の中では自問自答が繰り返されていく。
(「そこそこ命をかければ、貴重な情報を得られる・・・
何より、自分次第でその情報をお金に化けさせられる・・・!」
「決めた、これにしよう♪」
この日以降、海軍支部各所から報告書の紛失、過去の書類の行方不明などの事件が頻発することになる。
しかし、それが公になるのはかなり先の話である。
>余談
「「は?勘定は済んでる?」」
「はい。先に出られた女性の方が支払われました」
「知り合いか?」
「いや、知らねぇぞ」
「言付けもお預かりしております。ありがとうございました、と」
「「???」」
2013.7.15
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