「これが女々島アマゾン・リリーか・・・」

足の裏で地面の感触を確かめる。
商船で近くで下ろしてもらい、凪の帯を漕いでくるのは骨が折れた。
途中で何度か、海王類に襲われかけたし。
だが、一番にここに来たかったのは事実。
さて、どうしようかなぁ、と考えていた時だった。

「何奴だ、そこのマントの者!」
「ここが女々島と知っての上陸か!」

水着のような格好に、翻る白いマント。
ヘビが弓となり、矢が番えられるその鏃がぶれることなく、こちらを狙う。

「ご心配なく、私は女ですよ」

纏っていたマントを脱ぎ去り、敵意はないことを示す。
得物の剣すらも地面に置くが、やはり向こうは海賊。
その程度では気を許す訳がなかった。

「怪しい奴だ。
生きて帰れると思うな!」
「そういきり立たないでください、誇り高い九蛇の戦士方。
私、友達に会いに来ただけなんで、お目通り願えますか?」
「友達だと?」
「ええ」

にっこりと笑ったは、訝しむ九蛇の見張りに言った。

「皇帝ハンコックはいらっしゃいますか?」






























































ーーあなたの幸せを願うーー





























































「お主!まさか、 か!?」
「はぁ〜い、ハンコック。お久しぶり」

ヒラヒラと手を振る
呑気な挨拶とは対象的に、驚愕の表情を浮かべる目の前の女。
絹のような長い漆黒の髪、揺れる金のピアス。
大胆に胸元を開け、深くスリットの入った豊満な体躯を引き立てる紅の衣。
世界一と謳われる絶世の美女。
海賊女帝ボア・ハンコック。
その美女の柳眉が盛大に歪められているが、は構う事なく隣に控える二人に向いた。

「サンダーソニア、マリーゴールドもおひさ〜
2年振りだーー」
ーーダンッ!ーー
「なぜ、お主がここにおるのじゃ!」

近くのテーブルを叩き、声を荒げるハンコック。
だが、の方は動じる事なく目を瞬かせた。

「何って、友達の皇帝祝いだよ」

何かおかしい?というような
その言葉に思わずハンコックの動きが止まる。
それをいい事にはハンコックに歩み寄り、持っていた手荷物に手を突っ込んだ。

「はい、これはレイリーから。あ、こっちはシャッキーからね。
ソニアとマリーにはこれ〜」

ハンコックからくるりと方向を変え、自身より長身な二人に品々を渡していく。
と、はキョロキョロと辺りを見回した。

「ニョン婆は?
シャッキーから小包預かってるんだけど?」
「あんな女など知らぬ!」

わらわの前でその名を出すな、と言うハンコックの様子には妹二人にコソッと耳打ちした。

「なんかあったの?」
「昨日、喧嘩になったのよ」
「今その名前は禁句」

なるほど、とは頷いた。

「じゃ、後で渡しに行くから場所だけ教えて?」

妹二人に耳打ちし、同意をもらったはハンコックに向き直る。

「久々の再会じゃん?
お茶にでもしない?」























































「それにしても偉くなったよね〜
あのハンコックが七武海なんてさ〜」

目の前に出されたお茶を飲みながら、は呟く。
最初、新聞を見た時は本気でビックリした。

「姉様の強さを考えればそれも道理だわよ」
「何しろ、初の遠征で8000万ベリーの懸賞金がかけられたんだから」

自慢気に話す、サンダーソニアとマリーゴールドにそうだね、とが応じる。
それを聞いていたハンコックは、さも当然、とばかりにカップを傾けている。

「まぁ、トップに立つからにはそれなりの苦労もあるだろうけどさ、友人として応援してるよ」

そう言って、はソーサを置く。
居住まいを正したは3人を見た。

「ささやかだけどお祝いを言わせてよ、ハンコック、ソニア、マリー。
ようやく居場所を得れたことに」

その言葉に、サンダーソニアとマリーゴールドの身体が緊張したことが分かった。
は安心させるように二人の手を取る。
そして、仲良くなったあの当時のような笑顔を向けた。

「おめでとう。
私は誰よりも貴女達の幸せを願っているから。
絶対、3人は誰よりも幸せになる権利があるからさ」

世界の一番暗い部分を知っている貴女達だから、本当にそう思うんだ。
そうでなければ、遣る瀬無さすぎる。
その過去故に、なかなか人に気を許せないだろうが。

「当たり前じゃ、興醒めなことを申すな」
「はいはい、相変わらず己様な・・・」

ハンコックの言葉に苦笑を浮かべる。
と、ふと疑問が湧いたは話題を変えた。

「でもさ、ハンコックは紅一点なわけだよね?
他の七武海から言い寄られるんじゃないの?」

ソニアもマリーも心配じゃない?と振れば、カチャッと器が置かれた。

「ふん、そんなものわらわの能力で石にした後、粉々に砕いてくれるわ」
「「さすがは姉様」」
「はっはっは〜、心配無用みたいだね」





























>余談
、お主はこれからどうすのじゃ?」
「うん?ちょっとあちこち見て回ってくるよ」
「物好きなことじゃ、この大海賊時代に・・・」
「あはは、だって、自分の目で見てみないとそれがホントかなんて分かんないじゃん?」




2013.7.15

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