シャクヤクとポツポツと少ない言葉を交わしながら、グラスを傾ける。
がいないそこは、部屋が寂しく感じた。
気まぐれから始まったあの日から、自分の隣、自分の空間にあの子が居るのが当たり前になっていた。
それが当たり前ではないことに気付くとは、私もまだまだ先人の言葉を理解しきれていないということか。
ーー成長ーー
「あれから10年、か・・・」
「早いわよね」
独り言のように呟けば、シャクヤクも感慨深く言う。
「まだまだ子供と思っていたがな・・・」
「あら、女の成長は早いのよ?」
「シャッキーが言うと重みがあるな」
思わず笑いが零れる。
見た目若いこの女と自分とはそんなに歳は離れていない。
だのに、見た目にここまで差が出るのは、やはり女故か。
同じ穴の狢の長い付き合いの彼女からレイさん、と名前を呼ばれる。
なんだ、と視線を上げれば煙草を片手に持ったシャッキーは含んだ笑みを浮かべていた。
「ぼんやりしてるとあの子はあっという間に女になって、結婚して孫もできちゃうわよ?」
「それは、困ったな・・・」
予想もしてなかった言葉に、僅かに返答を詰まらせた。
そして、それがまさしくその通りになったら、と思いを巡らせる。
湧き上がってくるのは、寂しさと嫉妬。
「何処の馬の骨とも分からない輩に攫われるのは」
「まるで恋人みたいな言い草ね」
「言い得て妙だな、否定できんよ」
「でもまぁ普通の男じゃ、あの子の相手は務まらないでしょうね・・・
案外、相手は海賊だったりして」
娘は父親を無意識に重ねるらしいから、との発言にレイリーは顔をしかめた。
「海賊として多くを奪ってきたが、奪われる側になるとはな・・・」
「うふふ、レイさんのお眼鏡に敵う男なんていったら、限られてくるわね」
「何、あの子を幸せにできないのなら私が成敗してやるさ」
不敵に口端が上がる。
そう、自分がそこまでしたとしても惜しくはない。
あの子はそれほどの存在になっている。
「あらあら・・・もし、相手が海兵だったらどうするの?」
「老いたとはいえ、海賊王の右腕。海兵ごときに遅れはとらんよ」
「それなら大将クラスでも連れてこないと無理ね。
ふふ、年の差婚ね」
「・・・私は許さんぞ」
>余談
「レイさんは結婚式では泣くわね」
「なぜだね?」
「何年一緒にいると思ってるの?」
2013.7.15
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