「よし、こんなもんかな」

部屋を見回したは一人呟く。
10年使った部屋も、整理してみればあっという間で。
女の部屋にしてはもっと物があってもいい、とシャッキーが言っていたが自分には十分すぎだと思っていた。
そして今、足元にある荷物はもっと少ない。
これから必要になるものが、最低限入っている。
この部屋にもしばらくは帰ってこない。
やる事を済ませたは、足元の荷物を肩にかけ、ドアを閉めた。







































































ーー世界を見に行ってきますーー








































































バーに降りれば、そこにはいつもの場所に立つシャクヤクの姿。

「もう終わったの?」
「うん。持ってく物は少ないから」

そう、と笑ったシャクヤク。
は荷物を掛け直すと、扉の前で振り返った。

「じゃあ、シャッキー。
いってきます」
「ええ、いってらっしゃい」




































































扉を抜ければ、すでに海が見える。
頬を撫でる潮風。
波打ち際の小船の側にはレイリーが立っていた。
迷いのない足でそこに向かうと、その男と向き合う。

「いってきます、レイリー」
「ああ、気を付けるんだぞ」
「ん。レイリーこそ、シャッキーにあんまり心配かけちゃダメだよ?」
「分かっている」
「賭博もほどほどにね」
「おいおい、娘の門出なんだ。私に心配させてくれないのかね?」
「だって・・・」

口を尖らせるに、レイリーは苦笑を見せる。
そして、老齢にもかかわらず逞しい腕がを抱き締めた。

「世界がお前を待っている」

心地よいこの声も暫く耳にできない。
そう思うと、鼻の奥がつん、とした。
だが、出発は笑顔でと決めていた。
抱き返したは顔を上げ、まだ見上げなければならないその顔へと笑った。

「うん。見てくるよ、世界を自分の目で」
























2013.7.15

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