最近、家に居候が増えた。
同い年位の女の子が3人、そしておばあさんが1人。
ニョン婆と呼んでいるおばあさんは優しく、3人の女の子とも仲良くしてくれと頼まれた。
なかなか同い年の子と会わないので、もちろんそのつもりでいた。
いたのだが・・・
目が合っても、すぐ逸らされる。
話しかけようとしたら逃げられる。
外へ誘おうとしたら、部屋に閉じこもる。
そんなこんなで、会話がないまますでに2週間が経過していた。
そして我慢も限界と、外に出た1人に狙いを定め話しかけた。
散々逃げ回るが、こちらも諦めるつもりは無い。
そして、ついに・・・
ーー友達になった日ーー
「もう放っておいて!」
「やっとしゃべった・・・」
ここまで来ると、嬉しさよりも呆れが先行する。
「わたし、。
あなたがハンコックでしょう?」
「・・・・・・」
また無視かよ。
いい加減にしろとばかりに、歩き出す黒髪の少女の腕を掴む。
「ちょっと、話す時はこっちをーー」
ーーバシッ!ーー
「触らないで!」
掴んだ腕を力一杯振り払われた。
「何?情けでもかけてるつもり?
あなたもどうせ内心でバカにしてるんでしょ!
奴隷のくせにって、人間じゃないくせにって!」
「ちょっと、わたしがいつーー」
「勝手に蔑んでいればいいじゃない!もう私に構わないで!」
「だからーー」
「もう、同情なんてまっぴら!」
ーーパンッ!ーー
乾いた音に、ハンコックの声が止む。
そして、
「同情ならもっとマシなこと言うよ」
頬を押さえるハンコックに、の静かな声が響く。
そう、同情なんかではない。
自分事のように感じたのだ。
人格を無視した辱め、屈辱的な非道の数々。
妹達への仕打ちを見ているしかできない自分への怒り、悔しさ。
こちらを見下げる嗤い顏に向ける憎悪。
助けが来ない世界への絶望が。
は涙目になる少女を見下ろし、口を開いた。
「痛いでしょ?わたしだって手、痛い。
あなたの言葉でわたしは傷付いたのよ」
「貴女が悪いからじゃない!」
「一緒にいるんだから、話くらいしなさいよ!」
初めて声を荒げた。
まっすぐ見つめてくるに、ハンコックは肩を震わせる。
「ーーくせに・・・」
小さな呟きに、はなんだ?と片眉を上げた。
「私がどんな事されたか知らないくせに、偉そうな事言わないで!」
「知らないわ、だから何よ!」
即答するにハンコックは息を呑んだ。
そして畳み掛けるように言う。
「命令されてないじゃない!もう縛られてないじゃない!
自分が思った事をその口で言ってるじゃない!」
目を見開くハンコックに、は息を整え静かな声音に戻った。
「今は昔じゃない。あなたは今、ここにいる。わたしの目の前に立って、生きてる。
だったら、昔の事をウジウジ考えないで、今までできなかったことをやればいいじゃない」
深海と漆黒の視線が交差する。
そして、先に耐えられなくなったハンコックは視線を外した。
「もういい向こう行って」
「わたしは行きたい時に行くの。命令しないで」
つん、と言い返したの言葉にハンコックはカチンときた。
「さっき私に命令したくせに!」
「ふん、謝れって言うならあなただって謝ってよ」
互いの言葉に、互いがむっとした表情を浮かべた。
そして、
「暴力女!」
「自分勝手!」
「年下のくせに!」
「年上だからなによ!」
「世間知らず!」
「悲劇のヒロインぶって!」
「弱いくせに!」
「能力者だから何よ、カナヅチ!」
「かわいくない!」
「ヘソだし!」
「男女!」
・
・
・
夕暮れになり、バーの扉が開かれた。
そこから現れたのは同じようなぼろぼろの格好のとハンコック。
「あらあら」
「これは、また・・・」
「ニョにがあったのニョら、二人とも!?」
シャクヤクは面白そうに、レイリーは苦笑を浮かべて、ニョン婆は唖然として問うた。
すると、少女二人は互いに反対の方向を向き不機嫌そうに呟いた。
「「転んだ・・・」」
2013.7.15
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