「ねえ、はっちゃん・・・」
「にゅっ?どうした ?」
ヤルキマン・マングローブに打ち寄せる波に足を遊ばせ、 は海面に顔を出すハチに話しかけていた。
ーー見えたセカイ、感じたセカイーー
「どうして世界はやさしくないのかな?」
姿形が違うだけで忌み嫌う。
魚人は人間じゃないからと。
人間が人間を傷つける。
奴隷はヒトではないからと。
違ってもいけない?
同じでもいけない?
じゃあ、何が正しいの?
自分が目にしている世界は、悲しくて胸が苦しくなることが多すぎる。
この間だって、はっちゃんと遊んでいたらどうして魚人が居るんだとひどい言葉で騒がれた。
そして、天竜人に酷い扱いを受けていたあの少女。
今頃、あの子はどうしているのだろうか?
沈んだ表情で足元を見つめる に、ハチは口を開く。
「 が見てるのは世界のほんのちょっとだけなんだぞ」
「ほんのちょっと?」
おうむ返しに言う にハチは頷いた。
「世界はひろいんだ」
「そうなの?」
「そうだぞ」
「やさしい世界もあるかな?」
「きっとあるぞ」
「きれいな世界もあるかな?」
「にゅっ、魚人島はきれいだぞ!」
誇らしげなハチに、 はふ〜ん、と唸った。
「そうなんだ・・・」
そう言って近くにあったシャボンを指で突っつけば、それはゆらゆらと揺れて空に消えた。
「だったらーー」
ーーいつか、見にいきたいなぁーー
2013.7.15
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