「はき?」

レイリーの短い言葉に首を傾げる。
それが何だというのだろう?






































































ーー自分の力ーー











































































昨日、レイリーと酒場に入ろうとした際、危ないと思い思わずその手を掴んだ。
間を置かず、その中から騒音と怒声。
そしてレイリーから何故分かったのかと問われた。
にはそれがいつもの事、当たり前に分かったことだった。
だから何と言えば良いか迷い、その答えが『なんとなく』だった。

「そう、覇気というんだ」
「それがなんなの?」

自分の力がそういう名前がついているなんて、初めて知った。
それは問題があるものなのか?
今日は随分と真面目な感じのレイリーに は疑問をぶつける。

「その力はいつから使えるんだ?」
「う〜ん・・・そんなこと、はじめていわれたし」

いつからだろう、と考え込む に、ついにレイリーは目を見張る。

(「力を使っていることすら、気付いていなかったということか・・・」)

ますます、驚かせる。
類稀なる才能だ。
レイリーはまだ唸っている の小さい肩に手を置いた。


「うん?」
「その力との付き合い方を教えてやろう」
「?」

ぽかんとする に、レイリーは分かりやすくなるよう言葉を噛み砕いて伝える。

「その力は多用するのは良くない」
「あぶないの?」
「そういう訳ではない。
その力は素晴らしいものだ。
だが、使いこなせるようにした方が君が辛くなくなる」
「・・・ふ〜ん・・・」

見聞色の覇気は、コントロール出来なければ周囲の感情がつぶさに流れ込んでくる。
人の内に渦巻くそれは、表に出ないからこそ受け止めるには重く、醜聞なものが大部分だ。
受け流せる術があれば話は別だが、それをするには は幼すぎる。
無意識に使っているからといって、御しているとは限らない。
黙ってしまった に、レイリーは話を続ける。

「現に 、君は他の同い年の子供と比べれば感情の表現が少ない」
「そう、なの?」

きょとんとするその様は、たまに見せる年相応な姿。
いつもはどこか達観したような、老齢な自分と同じ空気を纏う。
その歳には不釣合いなそれ。
しかし、それは今まで無事に生きてこれたところに起因するだろう。
無意識に危険を察知し、人の善悪な感情を、機微を数えきれないくらいその小さな身体は受け止めてきた。

(「この歳なら幼子らしい振る舞いがあったっていいだろうに・・・」)

そう一人思うレイリー。
と、徐々に不安気な面持ちになる に気付き、レイリーは安心させるように笑った。

「心配しなくていい。
今だって別に命が危なくなる訳じゃない。
それに、その覇気はコツさえ掴めれば御するのは容易い」
「・・・わかった」
「私の言いたかった事が分かったのかね?」
「うん、なんとなく・・・」

こくん、と頷く
だが、この子の才能を考えればそれは『話し』を理解した訳ではないのだろう。
この子の見聞色の覇気の力は、それほどのものだ。
言葉にせずともその感覚で理解してしまう。

「そのぼんやりと感じていることを、これから言葉で言う事も覚えていかなくてはな」
「どうして?」
「生きるには、往々にして言葉を交わすものだからだよ」

笑顔でそう言えば、 の表情は曇る。
どうかしたか、と聞けば、しばらく黙した後、小さな口が開く。

「しゃべるの、すきじゃない・・・」
「はははは!これから楽しみを知れば、好きになるさ」


















































>余談
「いきなり年相応といっても難しいか。
まずは くらいの子がよく行く所に行くとするか」
「どこ?」
「シャボンディ・パークだ。楽しいぞ!」
「ねぇ・・・」
「どうした?」
「ひとごみってたのしいの?」
「・・・ははは、これは手強いかもな」





2013.7.15

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