ーーSnow meltーー


















































































































黄昏の街・ダングレスト。
元首室へと入ったとレイヴンの報告に、ハリーは盛大に眉をひそめ首を曲げた。

「は?」
「いや、『は?』って・・・今伝えた通りだわよ」

ドンの墓前に報告を終え、その足でユニオン元首へと同じ報告をして返されたのが2文字。
生前のドンのような鋭さはまだまだだが、こちらを疑い深く見据える視線をハリーは返した。

「今日は・・・4/1じゃねぇな。
ならあれか、2人して俺を担ぐつもりか?何企んでやがる?
「ほら、レイヴン。日頃の行いが出てるわよ。しっかりと釈明したら?」
「釈明って・・・俺様ってばそんなに信用ないのかねぇ」

隣のから突かれたレイヴンは、ポリポリと頬を掻くと再度ハリーに向いた。

「だから、嘘でも担いでもないってば。ホントの話」
「信用できねぇって言ってるだろ」
「だーもー!」

ハリーに両断され、レイヴンは頭を抱える。
目の前で繰り広げられる押し問答のそれにはからからと笑った。

「ま、ハリーの言い分も尤もね」
「ちょ、ってば・・・一応、お互いに当事者なのに」
「ハリー」
「なんだ?」

鋭い視線を向けるハリーに、は自身の左手を見せる。

「これが証拠」
「・・・」
「了承したわ」
「そうか・・・」

の言葉にハリーは暫く黙す。
そして腕を組んでいた元首は頷いた。

「分かった」
「良かった」
「って、えー・・・おっさんの存在無意味・・・」

ガックリとうな垂れるレイヴン。
そんな隣の肩にはポンッと手を置くと、レイヴンに親指を立てた。

「無駄骨お疲れさま」
「わー、普通に酷いー」
、幸福の市場が用あるって言ってたぞ。話聞いて来い」
「そ。じゃ行ってくる。
あ、それと・・・」
「なんだ?」
「あの時、引っ叩いてごめん。やり過ぎだったわ」
「気にすんな。あと、レイヴン暫く借りるぞ」
「煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」
「いやだから酷いって!」

の言葉に口を尖らせたレイヴンは吠える。
そんな二人を肩越しにひらひらと手を振ったは元首室を後にした。
の後ろ姿を見送ったレイヴンは、ハリーに向き直る。

「そんで、を追っ払って何のーー」
ーーゴンッ!ーー
「あだっ!」

危うく舌を噛み切りそうになった。
勢いよく振り下ろされた拳を受けた頭を抱えたレイヴンは、しでかしたであろう目の前。
歳下の元首と距離を詰めた。

「って〜〜〜・・・何すんのよ!一応、病み上がりなんだけだけど!?
「お前の件でに張り手食らってな。返しとく」
「さっき気にすんなって・・・そもそも俺様無関係では?」
「馬鹿言うな」

レイヴンを殴りつけた拳を振ったハリーは、深く嘆息すると椅子に腰を下ろした。
神妙な面持ちのハリーに、レイヴンの文句は引っ込む。
暫くして、ハリーは険しい視線を目の前に立つ男に向けた。

「お前、これ以上を泣かせんな。
あんな思い詰めた顔、もう二度と見たくねぇと思ってたんだからな」
「悪い・・・」

素直なレイヴンの言葉に満足したのか、ハリーは頬杖をつくと鼻を鳴らした。

「幸せにしてやれよ。
あの馬鹿、俺の言う事は聞きやしねぇ。
お前が寝てた間の依頼、全部自分で片付けやがって無茶ばっかだ」
「そうだったのね・・・」
「やっぱり言ってなかったか、あの馬鹿」
「強情さはドンのお墨付きだったからねぇ」

懐かしむようにレイヴンが言えば、ハリーも遠くを見つめ薄く笑った。

「で?これからどうするんだ?」
「んー、とりあえずは今まで通りかね。
カン戻すまでは、依頼は控えるけど混成部隊の方は引き続きやるって事になってるわよ」
「ってことは、ヘリオードにはいつ発つんだ?」
「一応療養しろっては言われてるからねぇ。1週間後の予定でいるわ」

そうか、と頷いたハリーは背もたれに体重を預けた。

「話は分かった。下がっていい」
「んじゃ」
「レイヴン、に伝言だ」
「?」

レイヴンが振り返ると、こちらを見ないままハリーは投げやりに呟いた。

「元首殴った罰だ。1週間、謹慎してろって言っとけ」

ハリーの言葉にレイヴンはきょとん顔を返す。
さっさと行け、とばかりに手を払う仕草のハリーにレイヴンは嬉しそうに笑った。

「ありがとさん」
「ふん」





























































Next
Back
2020.9.13