「・・・」

ひらひらと花弁が舞う。
窓際からそれをぼーっとしながら見つめていた。
自分が好きなハルルの花。
大樹となったあの町からその若木を譲り受けここまで大きく育った。
ハルルの町の名前の由来になった3種の花、ハルモネア、ルルリエ、ルーネンス。
あの若木はその3つの木の子供にあたる。

「こーら、いくらあったかいっても上着羽織ったらどう?」

背後から響いた声には肩越しに振り返る。
そこにはキッチンでせっせとデザートを作っているレイヴンが居た。

「私の気遣いより、さっさと手を動かして早く作ってよ。
もうすぐユーリ達来るわよ」
「そんなこと言うなら手伝ってよ〜」
「私は自分の分作り終わった」
「はぁ〜、そもそもおっさん甘いものはーー」
「ジュディス残念がるだろぅな〜」
「さっさと作らせていただきます」

現金なやつ。
とは言え、こんな時間が過ごせるとは思わなかった。
ふわりと鼻をくすぐる薫り。
春の匂いはこんなに気持ちが安らぐものだったろうか。

ーーパサッーー
「?」
「だから、羽織っときなさいってば」
「ありがと。で、デザートは?」
「完成しました」
「大儀であった」
「あのねぇ・・・」

げんなりとするレイヴンにが笑い返せば、用意していた紅茶を注いで渡した。

「お疲れ様」
「ありがとさん。
んで、なに見てたのよ?」
「んー?これからの主役をね」
「今年も見事に咲いたわねぇ」

の隣でティーカップを傾けるレイヴン。
それを見上げるの視線に気づいた男は目を瞬かせた。

「どったの?」
「いや、まさかこんな風に過ごせるとはあの時は思えなかったなぁって・・・」

そう苦笑しながらは、吹き込んだ春風に眩しそうに目を細めた。

















































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2020.3.22