数日後、隊長の執務室に4人の顔が揃った。
兼ねてから練られていた、魔物の大規模討伐の戦略発表の為だった。























































































































ーーAct.1-6ーー





























































































































「ーーと、いう流れです。
討伐にはこの魔導器ブラスティアを使います」
「発動はどうやんだ?」
「この・・・キーを差し込んでレバーを引けば発動します」
「あとは班編成ね」
「あぁ。
新人が参加するレベルとしてもぴったりってところだな」

ガリスタの作戦に、ナイレン、 、ユルギスが言葉を重ねていく。
理論上、問題はない。
魔物の巣窟となっている森に、網を張るように魔導器ブラスティアを設置、起動する。
そして、術式を展開するキーを作動。
魔導器ブラスティアを設置したメンバーは防御壁を発動してやり過ごす。

「魔物の数からみて、班はざっくりと2つが限度ね」
「ええ。
それ以上、人員を割いてしまうと設置時のイレギュラーに対応できませんから」
「なら、バランスを考えた編成を考えておけば良いか」

、ガリスタ、ユルギスの話はトントンと進んでいく。
それを見ていたナイレンは嬉々として会話に入った。

「じゃあ、俺はーー」
「「隊長は最後の仕上げだけお願いします」」

遮るように、二人の副隊長が声を揃える。
それを受けた本人は反論するように、口を尖らせた。

「なんだよ〜、たまには俺が動いたってーー」
「隊長みずから現場に飛び込むなんて何を考えてるんですか!」
「示しがつきません。少しは自重してください」

嗜める声と呆れた声。
三者のやり取りを、軍師は苦笑を浮かべて見守る。
そして、暫らく経ってナイレンは諦めたように両手を上げた。

「分かったよ、俺は最後だな。
で、班は?」
「ユーリとヒスカ、フレンとシャスティルをツーマンセルに。
後は、設置班と陽動班にバランスよく分ければ良いかと」

テキパキと答える に、軍師も同意するように頷く。

「隊長にはランバートで問題ないですよね?」
「あぁ、構わん」
「え?
それだと、私のパートナーがいないじゃない?
ショーンを付けるの?」

眉根を寄せる に、上司はニヤリと笑んだ。

「そうだなぁ、副隊長殿には自重してもらわんとな〜」
「・・・・・・もしかしなくてもさっきの事、根に持ってます?」
「いんや〜。
流石は俺の隊の長を務めるだけある ・フォールグ副隊長だ。
もちろん、自分の発言は守るよなぁ???」

完全に面白がってる。
からかう上司に、 はすっと目を細めた

「私が自重しなければならない状況にあるとは思いませんが?」
「なら、隊長命令だ。 は留守番」
「!」

どうしてそうなる、とばかりに の雰囲気が剣呑に変わる。
それを察したユルギスは慌てて仲裁に入った。

「ま、まぁまぁ二人とも。
お互いに理由を話さないと納得いかないですって」

だから話し合いましょうよ、というユルギスの提案に、その両者は睨み合ったまま。
頑として譲らない光景に、ユルギスは頭を抱える。

(「意地っ張りな二人だからなぁ〜」)

はぁ、という重い息を吐き出す。
板挟みのユルギスは助けを求めるように、隊長の後ろに控える軍師に視線を投げる。
が、助けの手は来そうにない。
それを証拠に、先ほどから苦笑を浮かべるばかりで、こちらに視線を合わせようとはしない。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・あー・・・・・・
隊長、 はどうしても参加させないんですか?」

過去を思い返しながら、しかめっ面の隊長に進言する。
これまでも片手で足りる位しか同僚が作戦に参加する姿を見ていない。
先日もそれの八つ当たりに近い形で、エリオスの訓練相手を務めたくらいだ(おかげで身体が重いのは に秘密だが)。
いつまでも体調に不安があるから、よりは納得できる理由が欲しいのも事実だった。
そんな事を知ってか知らずか、自分の肩を持ってくれたことに、 の瞳がパッと明るくなった。
反対にもう一方からは怨嗟の声が吐き出される。

「・・・ユルギス」
「いえ、実際問題、彼女の経験は隊長の次に豊富です。
現場の若手育成には良い手本となると思いまして」
「さすがユルギス!
そうよね〜、隊長命令は理不尽だわ」

水を得た魚かのように、喜々として が頷く。
反して、ナイレンは渋面を作った。
的を得ているだけに、切り返しができないようだった。

「だがなぁ・・・」
「ユルギスの言う通りですよ!ね、隊長?」
「お前が言うな」
「まあまあ。
今回は魔物の討伐で、別にギルドを相手にするのではないです、し・・・」

ユルギスの言葉を聞いた瞬間、今度はナイレンの瞳が光った。
しまった、と思った時にはもう遅い。
ちょうどいい理由が見つかったとばかりに、隊長の表情が180°変わった。

「そうだ、
用事を思い出した」
「・・・・・・そういう雑用、何で私なんですか?」
「はっはっは!
隊長命令だ、ありがたく受け取れ〜」
「断固拒否します」
「作戦行動中、ギルドが嗅ぎ回らないように見張っといてくれ」
「だから・・・」
「よし、話は以上。解散!」

反論を許さず、ナイレンは立ち上がり足早に部屋を後にする。
続いてガリスタ。
当たり前だが執務室には必然的にユルギスと 、二人だけとなる。
逃げたとしか言えないこの状況。
部屋に残されたもう一人、 は俯いているため表情は伺えない。
自ら墓穴を掘ってしまったユルギスは、恐る恐る声をかけた。

「あ・・・・・・セ、 ・・・さん?」

普段ではつけない敬称に、それだけ緊張しているんだと、訳もなく冷静な部分の自分が判断する。
嫌な汗が背中を伝い、表情がピクピクと痙攣していた。
と、無反応だった女性からようやく反応が返ってきた。
こちらを見るのは、底抜けた笑顔。
心情を慮ってみればあり得ない反応に、思わず肩が跳ねた。
そんなこちらの内心を知ってか知らずか、 の口が開かれる。

「ありがと〜ユルギスのおかげで今回は作戦に参加できそうだわ〜まぁ本音を言えば不本意率98.76%ってところだけど〜でも気にしないで良いの よ貴方は最善を尽くしたと思うのよねぇそう!それに余計な一言を言ってくれただとかは微塵もカケラも思っていないから全くもって心配無用だしそもそも原因 をたどればーー」
さん、本っ気で謝るから。
だからその笑顔やめてください」

絶え間なく繰り出される言の葉が、メッタメタに突き刺さる。
だが耳にする言葉より、 の底抜けな笑顔の方が数万倍恐ろしい。
土下座でもしような勢いのユルギスに、重い嘆息をした はようやくその笑顔を引っ込めた。

「ごめんなさい。
八つ当たりなの、分かってるわ・・・」
「いや、僕が余計なこと口走ったせいだしね」

お互いに苦笑を浮かべる。
にとっては納得などできないが、これが上司からの命令であれば従うしかない。
不本意な事だと分かってはいたが、その裏側に心配があることは理解していた。

(「ま、今回もおとなしくしてますか・・・」)

もし、どうしても行かなければならないと自分が判断すれば、それこそ誰の反対があろうが行動に移す。
今はただその時ではないだけ・・・・・・
自身、そんな状況が遠くないうちに来るだろうと直感しているのだった。



























































あとがき
VSナイレン図、でした。
この後、ユルギスからきっちりとお詫ーーカフェでごちそうしてもらったというのは別のお話し(笑)



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2019.2.1