時刻は昼を回った頃。
食堂の窓辺近くの席を陣取ったは、ソーサーの上にティーカップを置き、ほっと一息をついていた。















































































































ーーAct.1-2ーー














































































































朝早くから隊長からの呼び出しを受け、衝撃の連絡を受けてから数時間が経過したところだった。
だが日頃の行動の賜物か、新人隊員二人分の準備はつつがなく完了した。
おかげでこのようにして、休憩の時間を確保する事ができている。

(「あとは本人達に書いてもらう書類を渡して、巡回から戻った二人に連絡を入れるくらいね」)

手元の資料を振り分けながら、他にする事はなかったかと考え込む。
その時、慌しい廊下を走る音が食堂へと近づいてくるのが分かった。

ーー・・・タッタッタッタッタッ、バタン!ーー
「見つけたー!!」

食堂に飛び込んできたのは高く張り上げた声。
は気にする風もなく、紅茶を飲み続ける。
と、その人物はずんずんと食堂を横切ると、の前にドカッと腰を下ろした。

「聞いて聞いて、ビックニュース!
こんな田舎町にさ、なんと新人隊員が来るんだって!しかも二人も!!」
「ええ、知ってるわエリー。
だからちょっとは落ち着いたら?」

バンバンと机を叩く音はいささか耳障りだ。
は苦笑するように宥めると、空いているもう一組のカップに紅茶を注ぐ。
それを目の前の人物に渡すと、紅茶はあっという間に飲み干された。

「ぷはぁ〜!うん、美味しい!!」
「・・・エリー?それじゃあ隊長みたいなオヤジキャラになっちゃうわよ?」
「オヤジはヤダけど、の淹れてくれたものは全部美味しいから良いの♪」

そういうことが言いたいんじゃないんだけど、と思ったが満面の笑みに毒気をぬかれたはそういうことにした。

「ねねね!副隊長!
お願いがあるの!」
「・・・・・・」

こちらに身を乗り出す女性をサファイアの瞳が捉える。
肩にかかるざっくばらんな緋色の髪、大きな橙色の瞳。
天真爛漫をそのまま人の形にしたような彼女がエリオス・クロムウェルだ。
騎士団での付き合いはすでに2年ほどになる。
そんなエリオスが言う『お願い』というものは、簡単に予測がついた。

「ダ〜メ」
「えぇ!まだ何も言ってないのに!」

口を尖らす彼女に、は苦笑した。
言わずもその顔にしっかりと書いてあることに、エリオスは気づく日がくるのだろうか?

「なら、当ててみましょうか?」
「何を当てるんだい?」

食堂に別の声が上がる。
それは今朝方も一緒にいたユルギスだった。
難しい顔をしたまま、エリオスは口を開く。

「私が、にお願いがあるって言ったら、話も聞かないでダメって!」
「なんだ、そんなことか」

ユルギスの軽い扱いに、緋色は火がついたようにもう一人の副隊長に迫った。

「そんなこと、じゃあなーい!
お願いの内容も分からないのに、ユルギスもひっどーーー」
「手合わせを新人二人に吹っかけたい、ってお願いじゃないのか?」

言われた言葉にエリオスは固まった。
どうやら図星らしい。
やっぱりそうか、とは嘆息すると動かない緋色に視線を向けた。

「エリー、訓練好きなのは結構だけど相手は他にしてね」
「だぁって!
エルヴィン、巡回の交代に行っちゃって相手いないんだもん」

不平を並べる彼女に、だったら、と言葉を続けた。

「訓練相手なら、他にもいるでしょ?」
「だから、エルヴィンは・・・」
「エリーがさっき食って掛かってたその人は、シゾンタニアでも素晴らしい腕前を持っているはずだけど?」

の言葉に、橙の瞳がきらんと光った。
そして、期待が込められたキラキラとした瞳がユルギスをロックオンする。
標的となった彼は、慌てたように説得にかかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。訓練場は他の隊員が使ってーー」
「今から4時間は空いていると申請は確認済みよ」
「いや、これから新人が来るのに・・・」
「今日の何時に来るかなんて分からないでしょ?」
「・・・き、気分が・・・」
「副隊長のくせに、体調管理がなってないなんて言わないわよね?」
「・・・・・・」
「他に、何か?」

逃げ場の隙が一寸もないほど追い詰められたユルギス。
一つの答えを言うしかない状況にあっという間に追い込まれていた。
だが、最後の抵抗とばかりに容赦ないその結論に持っていった女性へとついと視線を向けた。

、何か怒ってるのか?」
「怒ってないわ」
「いや、怒ってるだろ?」
「別に、ユルギスだけ外回りに行けることが羨ましい腹いせじゃないから気にしないで」

そういうことか、とユルギスは肩を落とした。
行きたいというのなら、巡回のメンバーに加えても構わない。
が、それができないのは自身達の上司、ナイレン・フェドロック隊長がそれを良しとしないからである。

「仕方ない・・・・・・エリー、やるか?」
「うん!やる!!」

即答で交わされたその時、外から言い争う声が響いた。

『・・・君って奴は、昔からそうだ!どうして・・・』
『・・・っせぇな、お小言はたくさんなんだよ・・・』

これからはこの騎士団も更に賑やかになるだろうと、は立ち上がった。

「さて、私はこれから仕事をこなしてきますか」
「新人君のところに行くの?」
「そ。
エリーはそのまま訓練でしょ?」

の問いに頷いた緋色だが、すすっとこちらに歩み寄った。

「そうなんだけど〜・・・新人君二人の顔を拝みたいから、途中までと一緒に行く!」
「あら、ならユルギスって放って置かれちゃうじゃない?」
「構わないよ。
どうせ見てこないと訓練どころじゃなくなるんだし、見てくるといい」
「さっすが、分かってるぅ!」

調子よく声を上がった声には苦笑すると、エリオスを連れ食堂を後にした。

















































あとがき
2番目のヒロイン登場!ガンガン絡めていきます!




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2019.1.26