ーーNo.32 不穏の予兆ーー
宿屋での小休止を終えた一行は再び本来の目的地に向け歩き出した。
そして、領事館に到着するとヴァンから連絡が入っており、すでに先遣隊と先にアクゼリュスに向かったらしい。
こちらも急ぐか、と思った。
その時、ガイが不意に膝をついた。
「ガイ!?」
心配そうに近づいたルーク。
が、ガイは主人を突き飛ばした。
ーードンッ!ーー
「いてて・・・お、おい。
まさかおまえもアッシュに操られてるんじゃ」
「いや・・・別に・・・幻聴は聞こえねぇけど・・・」
そう言いながら苦しそうに表情を歪めガイは答える。
ルークは直前のことを思ってか、近づくのを躊躇う。
そんな中、ジェイドがガイに近づくと腕に視線を落とした。
「おや、傷ができていますね。
・・・この紋章のような形、まさか『カースロット』でしょうか」
「カースロット?」
その言葉にイオンとカンタビレの視線が交錯する。
その言葉の意味が分からないメンバーにイオンが説明を始める。
「カースロットは人間のフォンスロットへ施すダアト式譜術の一つです。
脳細胞から情報を読み取りそこに刻まれた記憶を利用して人を操るんですが・・・」
「ではすぐに出発しましょう」
「おい!このままにしておくのかよ!」
カンタビレの言葉に噛み付くようなルーク。
それに呆れ顔が向けられた。
「カースロットってのは術者との距離で威力が変わる。
ガイがここまでなってることを考えれば、ケセドニアを離れた方が症状が治まる可能性が高い」
分かったら行くぞ、というカンタビレの言葉に皆が動き始めた。
そんな中、カンタビレは歩き出すイオンと歩調を合わせ耳打ちをする。
(「イオン様、あの傷は確か・・・」)
(「はい、ですが今は確証もありません。
もう暫く様子を見ましょう」)
(「?ええ、分かりました」)
普段よりも声が固いイオンの態度を不審に思いながらも、言われた通りだったためカンタビレも港へと急ぐのだった。
所変わり、領事館2階の壁を隔てた屋外。
どうにか人一人分の足場があるところで、壁にぴったりを聞き耳を立てていた人物に向け、不機嫌そうな声が上がった。
「おーい、話が違うぞシンク?」
声の方向へシンクが視線を落とせば、露天マーケットの天上で器用に胡座をかいているザインがさらに続けた。
「俺は奴らの手勢を減らす策はお前が持ってるって聞いてたから、ここまで来てやったんだがな」
「思ったより抵抗が激しいだけだ。駒になるのに時間はかからないよ」
「って、それをさっさとするためにここまで近付いたんじゃねぇのか?
カースロットってのも、案外使い勝手が悪ぃのな」
ふい、と視線を外すザインの皮肉に応じる事なく、シンクは独白した。
(「・・・まぁいい、どうせ奴らはーー」)
「シンク」
「!」
まるで心情を読まれたタイミングで名前を呼ばれた事で、シンクははっとしたようにザインに向いた。
だがそこにあったのはいつものような、考えの読めない不穏な口元。
それは、いつも翻弄される相手を彷彿とさせ、静寂なはずの精神を酷くざわめかせた。
「追撃でもするか?」
「・・・いや、必要ない。あんたは言われた通りリグレットに合流すればいいよ」
「ほ〜ん、随分とあっさり退くんだな。
わざわざこちらが手を下さなくとも問題ない秘策でもあるってのか?」
「あんたは知る必要はないよ」
「ふーん・・・」
「アリエッタの魔鷹が待機している、さっさと行けば」
そう言い捨て、シンクは身軽にその場から姿を消す。
それを見送ることになったザインはふっと口端を上げた。
「・・・可愛気ねぇ餓鬼」
本人に聞かれる事なく、呟かれた言葉は喧騒の中へと消えていった。
>skit 『水浴びvol.3』
I「水浴びと言えば、ここに娯楽保養施設を作るんでしたね」
C「そういえば、アスターの次年度の事業計画書にそんな事を申請したと話を聞きました」
L「こんな砂まみれで保養になるかよ」
I「立地や気候を有効活用しするそうですよ」
C「植物園、温泉、大規模温水プール、アトラクション施設、世界のグルメコート、会員制スパetc...
どこぞの地域と競合する気なのか、予算額が馬鹿げた計画ですよ」
G「アトラクション施設か!どんな譜業を使うんだ!?」
A「はわわ〜、世界のグルメか〜」
N「会員制スパなんて素敵ですわ」
I「地域振興で大会も開くと聞いてますよ」
C「・・・あれは大会ではなく、ただのミスコンですよ」
LG「「ミスコン!?」」
A「えー!そんなのヤダー」
N「殿方の考えそうな事ですわね」
T「・・・最低」
LG「「・・・」」
N「ルーク!何を考えるのです!」
L「な、なんだよ!なんでもねぇよ!」
A「ガイってば、どーして口元押さえてるの?」
G「ハハハ、ナンデモナイヨ」
J「新たな紛争の火種ですねぇ」
I「猛者を集めた大会も聞いてますが?」
C「あー、ミスコンの男版でしたか。ボディービルだかなんだか」
NAT「「「!?」」」
L「むさいっーの」
G「興味ないな」
NAT「「「・・・」」」
L「ナタリア!おまえもオレのこと言えねぇだろ!」
N「んま!一緒にしないでくださいませ!」
G「ははは」
A「えー!イケメンの大会良いじゃん❤︎」(ついでに玉の輿大会とか・・・)
T「アニス・・・」
J「これもある意味火種ですかねぇ」
Next
Back
2020.2.19