ーーNo.31 二度目の流通拠点ーー
「やっと着いた〜」
「ようやくケセドニアまできたな」
「イオン様、お身体のお加減は?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「ここから船でカイツールへ向かうのね?」
「マルクト領事館へ行けば船まで案内してもらえるはずです」
「よし、早く行こうぜ」
港が近い所為か、熱砂を越えた後では涼しく感じる。
再び訪れた世界の流通拠点ケセドニア。
そこはいつもと変わらず、商人や観光客の喧騒に満ちていた。
一行は目的地である領事館に向かい始めた。
しかし、
「・・・また・・・か!」
痛みを堪えるように声を絞り出したルークが、頭を押さえ歩みを止める。
それにガイが心配顔で駆け寄った。
「ルーク!またか?頻繁になってきたな・・・」
「・・・大丈夫。治まってきた」
「いや、念のため少し休んだほうがいい」
「そしたら宿に行こうよ。
イオン様のこともどうするか考えないと・・・」
アニスの提案に、行き先を宿屋に変えることになった。
露天マーケットを抜け、賑やかさが落ち着いた道を歩く。
「医者には看てもらってたんだろ?」
歩きながら、隣にいるガイにカンタビレが問えばもちろんだと頷きが返る。
そしてナタリアが続けた。
「バチカルで一番の名医に診察していただきましたわ。
ですが、原因は分からないままですの・・・」
「なら、薬もないか。
ここじゃ首都以上の腕を持つ医者の話は聞かねぇしな」
手の打ち様がないなとカンタビレは嘆息した。
「わたしの第七音素で治せないでしょうか?」
「治療箇所だって分からんだろ。痛む箇所が原因とは限らん。
原因が分からないものを、どう治すってんだ?」
「あ、それは・・・」
的を得た返しに、ティアは口ごもる。
と、ついに足が止まったルークにティアが近づいて行った。
それを見送ったカンタビレは再び小さく嘆息すると、黙ったままのジェイドに向いた。
「で?何か手は打てないのか?」
「おや、私に聞くのですか?」
「優秀な大佐殿と凡人とじゃ、打ち出せる策に違いがあるだろうが」
「そうですねぇ・・・」
眼鏡を押し上げるジェイドに、カンタビレは答えを待つ。
すると、
「まずは、ルークを止めますね」
「は?」
「ご主人様!大丈夫ですの?」
「ルーク、しっかりして!」
「黙れ・・・!オレを操るな・・・!」
ミュウとティアが声を上げる。
頭を抱えたまま、誰かと会話をしているようなルーク。
だが当然その相手はいない。
と、剣を抜いたルークに皆に緊張が走る。
「ルーク!どうしたの!?」
「ち・・・ちが・・・う!
体が勝手に・・・!や、やめろっ!」
怯えたルークの声と裏腹に剣は振り上げられ、その先には驚きに身動きが取れないティア。
いち早くカンタビレが動き、鞘でその剣を受け止める。
ーーガキィン!ーー
「教官!」
ティアを庇うようにルークの剣を受けたカンタビレ。
そして素早く剣を弾き、ルークの首元に手刀を叩き込んだ。
ーードサッーー
「おいカンタビレ!」
「一般人に負傷者を出すつもりか?
主人の手綱は握っとけって前にも言ったろうが」
「二人とも待ちなさい、まずはルークを宿屋に連れて行きますよ」
剣呑になる前にジェイドがカンタビレとガイの間に入る。
そして一行は近場の宿屋でルークが目覚めるまで待つ事になった。
「・・・ルークの奴、どうなっちまったんだ?」
ベッドに横になるルークを見て、ガイがぽつりと呟く。
他の皆も心配顔で様子を見守る。
「健康に難ありかぁ。
介護するぐらいならぽっくり逝きそうなお金持ちの爺さんの方が・・・」
「何か言いまして?アニス」
「・・・えへ❤︎なんでもない❤︎」
・・・数名を残して、だが。
「・・・大佐。ルークのこと何か思い当たる節があるんじゃないですか」
「・・・そうですねぇ」
ティアの問いに、訳知り顔で眼鏡を押し上げるジェイド。
続くようにナタリアも問うた。
「アッシュというあのルークにそっくりの男に関係あるのではなくて?」
その問いに暫く沈黙していたジェイド。
それに何を言うのかと見ていたカンタビレだが、ジェイドはようやく口を開いた。
「・・・今は言及を避けましょう」
「ジェイド!もったいぶるな」
怒りを見せるガイに、いつもより冷静なジェイドの声が響いた。
「もったいぶってなどいませんよ。
ルークのことはルークが一番に知るべきだと思っているだけです」
「ご主人が目を覚ましたですの!」
「・・・オレがどうしたって?」
なんだ、聞こえていたのかとカンタビレは目を細めた。
起き抜けの緩慢な動きのルークにジェイドはひとまず直前の問いをはぐらかした。
「いえ、何でもありません。
どうです?まだ誰かに操られている感じはありますか?」
「いや・・・今は別に・・・」
言葉切れ悪くルークが答える。
原因は分からない、だが自分の意思ではない動き。
まるで操られているようなそれ。
ルークの表情には誰が見ても分かるような不安が宿っていた。
憶測を語るつもりはないが、今はっきりしている事実をカンタビレは口にした。
「コーラル城でディストの奴が何かしていたぞ。
それが原因だと断定できんがな」
「でしたら、あの馬鹿者を捕まえたら術を解かせます。
それまで辛抱してください」
「・・・頼むぜ、全く。
ところでイオンのことはどうするんだ?」
気を失う前の事をちゃんと覚えたルークが問えば、ティアが妥当な答えを返す。
「とりあえず六神将の目的が分からない以上、彼らにイオン様を奪われるのは避けたいわね」
「同感だな。
イオン様がよろしければ、このまま同行していただきたいのですが」
「はい、僕も連れて行ってください」
「イオン様!モース様が怒りますよぅ!」
アニスは咎める声を上げたが、それを遮るようにカンタビレが割入った。
「アニス、親書を託された以上マルクトに報告は必要だろ。
それであのタヌキがごねるようなら、俺の独断だったとでも言っておけ」
「それでよろしいのではないですか。
アクゼリュスでの活動が終わりましたら私と首都へ向かいましょう」
ジェイドの言葉にカンタビレは迷惑そうな表情を浮かべる。
都合よく責任だけ取らされたようで気分が悪い。
そんなカンタビレの心情を他所に、年長者組二人からの意見にアニスはそれ以上続けられず従うしかない。
と、
「・・・ああっと、決めるのはルークでしたね」
これは失礼しました、と慇懃にジェイドが返す。
それに蔑ろにされたルークは吐き出すように怒声を上げた。
「・・・勝手にしろ!」
「またしばらくよろしくお願いします」
こうして、再びイオンの同行が決まった。
>skit 『水浴びvol.2』
N「まったく、殿方というのはみんな不潔ですわ」
A「う〜ん、水浴びはアレだけど、ムキムキじゃないカッコイイ人の引き締まった胸板とかちょっといいかもって☆」
N「ま、まあ。はしたない!・・・で、でも、悪くはありませんわ」
A「お尻とか、きゅっとしまってて〜」
N「逞しい腕の筋肉も捨てがたいですわ」
S「濡れた髪を掻き上げた仕草とか、カッコ良いとヤバイよね」
N「清潔感は必要ですわ。色が白すぎるのもいかがかしら」
T「あ、あなた達・・・それじゃあルークと変わらないわよ」
N「あら・・・いやですわ・・・」
A「だけどティアだって、色々好みがあるでしょ?」
T「え!?わ、わたしは・・・」
A「・・・まさかルーク?」
T「違うわよ!あんな子供・・・」
A「あ!アニスちゃん、ぴーんときちゃった。ヴァン総長でしょう?」
T「!!!!!」
N「意外でしたわ・・・ティアは髭が好みでしたのね」
A「それを言うならブラコンでしょ・・・」
C「うおっほんっ!」
ANT「「「!!!」」」
I「カンタビレ?どうしました?」
C「いえ、お耳汚しの話題が届いた気がしたのですが、勘違いのようでした」
ANT「「「・・・」」」
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2020.2.19