「・・・・・・」
ジャンは言葉を失っていた。
見事、という他なかった。
舞うような動き、息のあったステップ、肌に触れそうなそれはまるで恋人同士のようで・・・
「さすがね、」
「いや、久々で結構動きの固さが目立ったし」
「そんなことはない、私がパートナーを務めたいぐらいだ」
「さよで、お相手ありがとーございました。
リザもありがとう、忙しい中ごめんなさい」
「良いのよ、これから急がせるから」
「・・・君達、私は上官なんだが・・・」
目の前で繰り広げられるやり取りに、ロイはげんなりとしながら文句を言うも勿論スルーされる。
そして、さっさと仕事しろとばかりに追い返したはくるりとジャンに向き直った。
「ハボック少尉」
「・・・へ?う、うっす!」
「始めますよ」
「おう。よろしくな」
「ええ・・・覚悟、してくださいね?」
その言葉の意味するところを、ジャンは身を以て知ることとなる。
スパルタ指導のゴングが鳴らされた。
「さて、ステップはこの位で実践に移ります」
「おう!」
「肘をもっと高く」
「うっす!」
「左手、腰をしっかり掴む」
「で、でも・・・」
「さっさとする」
「う、うっす」
「足の踏み出し、ワンテンポ遅い」
「っす」
「右、左、右、ターン、みーーステップミスですよ」
「う・・・」
「頭からもう一度。右、左、右、tーー!」
「わ、悪い!」
「気にしないでください。もう一度」
ーー1時間後。
「つ、疲れた・・・」
ドサッとジャンはソファーに倒れこんだ。
始めてまだ1時間しか経っていないと言うのにこの有様だ。
すでに、節々に痛みがきてる。
「30分休憩したら再開します」
「ええ!?」
「何か問題でも?」
「な、無いっす・・・」
「ではまた後で」
そう言っては部屋を後にした。
会議室に一人の残されたジャンだったが、あまりの疲労困憊ぶりに何もする気が起きない。
と、
「よぉ、ハボ。どんな調子だ・・・って」
ドアから現れたのは、顔馴染みである同僚の姿。
「こりゃ、ひでぇな」
しかしその声は同情半分、からかい半分。
別に怪我などしてないというのに、その言葉が出ると言うのはそれほど疲れきった顔をしていると言うことなのだろう。
「まだ1時間だぜ?一週間後、俺の身体、壊れてるかも・・・」
「でもあの少尉と密着だろ?羨ましい奴だぜ」
「シゴキが半端ねぇぞ。代わるかブレダ?」
ソファに沈んだまま言い返せば、ブレダは即答で返した。
「遠慮しとくぜ、オレは頭脳戦専門だからな。
そら、服脱げよ。湿布貼ってやる」
「ん?おお、サンキューな。
はぁ・・・手当ぐらい美人看護婦にして欲しいぜ」
悪態を吐く同僚に、ブレダは笑いながら湿布を叩き付けた。
「んな時間ねぇだろう、が!」
ーーバシッ!ーー
「痛って!!」
>おまけ
「おー、少尉じゃねぇか」
「どうも」
「任務で業務軽減されてるって聞いたぜ、ハボックの奴は?」
「向こうの会議室で面白い事になってますよ」
「面白いこと?」
「ええ、じゃコレよろしくお願いします」
「は?おい、そういうお前はどこに」
「休憩です、しっかり同僚の愚痴を聞いてあげてください」
「???」
湿布は
からブレダに渡されたものだったりする
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2019.8.7