辿り着いたのは薄暗い寝所らしき場所だった。
おそらく教皇がいるのだろう。
ノアの一族の先頭を切って歩いてきたの歩みが止まる。
アポクリフォスの気配を辿ってきたが、ここで消えた。

(「間違いなくここにいる。でも、どこに・・・」)

その時、カーテンが僅かに動いたことでは動きを止める。
だが怪しい気配はない。
別な場所を探そうと視線を逸らした。
瞬間、

ーーヒュンッ!ーー

カーテンの裏から光が放たれる。は咄嗟の事に僅かに反応が遅れた。
眼前に迫る、光。

(「!これって・・・!」)
ーードッ!ーー
























































ーーもう一人の守人ーー



























































しかし、それがに届く前に何かが彼女の前に飛び出した。
素早く受け身を取り、体勢を整えたが見たのは千年伯爵が崩れ落ちる姿だった。

ーードサッーー
「なっ!」
「「千年公!!」」

予想だにしない人物の行動に、ティキとロードに続いては伯爵に駆け寄った。

「レメク!どうして・・・!」

傷を確認したが、それらしい外傷が見当たらない。
とすれば、体内を侵食する能力か何か。

「わが、輩は・・・なぜ・・・」
「?」

切れ切れに紡がれる言葉には訝しんだ。

(「どういうこと?私を庇うつもりじゃなかったと?」)

そもそも、彼自身が自ら動くなど信じられなかった。
だがの前に飛び出したのは、紛れもなく庇う以外の何物でもない。

「ぐっ!・・・・・・わ、わた・・・私は、何と罪深い・・・」
「!」

口調が、あのふざけたものでなくなってる。
それは、の覚えがある7000年前のあの姿のようで。

「ぐああああぁぁぁっ!」

苦し気な絶叫を残し、伯爵はそのまま意識を手放した。
ぐったりと動かなくなった男の姿は人に戻り始めている。
そう。
ノアの姿ではなく『人間』に。

「・・・ジョイド。ロードの扉を使って、レメクを合流場所へ」
「お前はどうする?」
「阿呆な事聞くな」

ピシャリと言い返すは、視線をカーテンから離さない。
そんなとレメクの間でティキは視線を彷徨わせる。
そして、

「大丈夫なのか?」
「誰に言ってんのよ」

主語がない問い。
それは千年伯爵が倒された敵を一人で相手にするのかという心配か。
それとも、勝てるのかという不安から聞いたのか。
ティキの心情を読んだようなは、初めて男に視線を移した。
不安のカケラさえ抱くことが間違ってると思わせる、自信に満ちた瞳で。

「それこそ愚問でしょ」

の言葉に、ティキは伯爵を連れロードが作った扉へと姿を消す。
それを見送り、は光が現れたカーテンの奥にあるモノに対峙した。

(「さっきの攻撃、害するものじゃなかった。
だから私は回避できなかった。そして何より、レメクのあの反応・・・」)

まるで、昔に戻ったような。
良心の呵責に耐えきれなかったようなあの様子。

「・・・相手に善なる心を取り戻させ、その諍いの元を取り除く者・・・」

にはそんな人物に心当たりがあった。
いや、そんな人智を超えた力を持つ者など、一人しか心当たりはない。

ーーコツ、コツ、コツ、コツ・・・ーー

近付いて来る気配には身構える。
ビロードのカーテンの向こうからやって来る人物に鋭い視線を向けながら、記憶の彼方にある覚えのある気配に合点がいった。

「なるほど、教皇が高齢にも関わらずぽっくりいかなかったのはーー」

そしてそのカーテンが上がり、予想に違わぬ姿を目にしたは口端を上げた。

「あんたがそばにいたからね、ラファエル」



































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2014.4.26