ーーコンコンーー

草木も寝静まる深夜。
とある一軒の扉を叩く音は、あっという間に闇に消えていく。

「誰だい?」
『夜分に失礼します』

扉越しに返される丁寧な声。それを開けてみれば、一人の女が立っていた。

「アレン・ウォーカーに会いにきました」





























































ーー向けられた刃ーー





























































単刀直入すぎるほどそれだけを言ったはずかずかと入っていく。
そして、まるで初めからその場所が分かっていたかのように、とある部屋の扉を押し開いた。

ーーバタンーー

すると、部屋にいた者らの視線が向けられる。
そしての目的の人物がベッドの上にいた。

「ジェシカちゃん!」
「あら、ジョニー。科学班ぶりね」

感動薄くが言えば「あと、私だから」ときっちり訂正を入れる。

「てめぇ・・・」
「神田は相も変わらず仏頂面ね」
「うるせぇ」

呆れた顔を神田に向けたは室内に視線を巡らせる。
質素なベッドが二つ、質素なソファ、質素な調度品があるだけの部屋。
特に怪しい気配も見当たらない。
見終えたは二人に視線を戻した。

「悪いけど、二人共出てってくれる?」
「「は?」」

疑問符を返す二人に、は腰に両手を当て続ける。

「私はアレンに用事なの。正確には14番目だけど、ね」
「どういうこと!?」
「説明する時間が惜しいの、出ろ」

ビッと親指で出口を指す
それに「ど、どうしよう?」とジョニーは神田に相談している。

(「ぶっちゃけ面倒だし・・・」)

とは二人に口が裂けても言えないは内心で呟くに留める。
叩き出しても良かったが、後々の説明で突っかかられるのが目に見えていたので、それはしないでおく。
そして、さっさとしろ、とばかりな空気を放ちながらは明後日の方向を見て待っていた。
が、

ーーチャキッーー
「話せ」

いきなり六幻を抜刀した神田がに切っ先を突きつけた。
不機嫌そうな神田と動じることないは睨み合う。
あまりに突然のことで、慌てふためいたのはジョニーだ。

「ちょ、神田!」
「あ〜ら、一丁前な口聞くようになって」
「部屋で暴れるのは止めとくれ、片付けが面倒だよ」
「知るか」

家主マザーの言葉を切り捨て、神田は鋭い視線をに向けたまま僅かも外れない。
それを冷めた目で見ていただったが、埒が明かないか、と溜め息をつく。

「はぁ・・・ったく、しょーがないわね。手間取らせて・・・」

そう言って、六幻の切っ先を摘むと自身から逸らし、部屋の入口に立つマザーに振り返った。

「マザーさんもよろしければご一緒に。クロスからは同席させるよう言われてますので」











































































場所を移したはかいつまんで話をした。
自分の事、この戦争の事、そしてこれから待ち受ける戦いの事。

「そん、な・・・信じられない・・・」
「リーバーは信じてくれたけど?」

呆然とするジョニーに、は即座に言い返す。
と、

「なるほどな」

それまで黙って聞いていた神田は、組んでいた腕を解き立ち上がる。
そして、を射殺せんばかりの鋭い視線で見下ろした。

「元を正しゃあ、てめぇが大元って言えなくもねぇな」
「待ってよ神田! ちゃんのせいじゃーー」
「そうね。この世に存在している中で私が一番の罪人でしょうね」
ちゃんまで!!」
「ふん、覚悟は決まってるってツラだな」
「7000年前の争いを現在まで持ち込んだ責任は取るつもりよ」

毅然とした面持ちでは神田と向き合う。
勝手に進んでいく話にジョニーは一人頭を抱えた。
息をすることすら憚られる中、不意に神田に向ける視線を緩めたは、ふっと笑んだ。

「ここで私を殺したっていいよ。ユウにはその資格がある。
この戦争でたくさんの犠牲を強いられたユウなら・・・
私はこの戦争に加担していると言っても過言じゃないしね」
「・・・上等だ」

そう言った神田は六幻を抜く。
切っ先は簡単にの肌を裂き、紅の滴が首筋を伝う。

「か、神田!!」

非難するジョニーの声にも二人は動かない。
だが、暫くして六幻が下ろされた。

「?」
「ふん、戦意のねぇ奴を斬れるか」
「ユウ・・・」

驚きを隠せないに、まるで照れ隠しのように神田はくるりと背を向ける。
そして、先ほどと変わらない語調で不機嫌そうに言った。

「てめぇがその責任を取ってから、ぶった斬ってやる」
「そう・・・楽しみにしてる」

その背中に感謝と謝罪を込め、は嬉しいような悲しいような気持ちがない交ぜになった胸中でそう呟いた。





































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2014.2.23