日中に発見した新たなヒントを元に、 の謎解きは最終段階となっていた。
そして夜の帳が下りた、珍しく静寂な夜。
凝り固まった身体をほぐすように、 は伸び上がった。

(「んー・・・疲れたから、ちょっと休憩」)




































































ーーはい、やっぱり残念でした、とーー





































































ーーキュッーー
「ふぅ・・・」

蛇口を閉めた は一つ息をつく。
全容が見えてきた。
天使ウリエルがなぜ地上に降り立ったのか、ノアとの関係、姿を消した理由わけ、イノセンスの本当の意味。

しかしまだはっきりしないことがある。
なぜノアに力を与えたのか、強大な力を持った天使がなぜ存在を消す事態になったのか、イノセンスがノアに敵対した理由。
そしてノアを裏切ったユダ14番目と伯爵の関係。

14番目のことは直接、本人に確認できればいいが・・・
今は居場所が分からないから、後回しにするしかない。
バスローブに袖を通し、まだ雫がしたたる頭を拭きながら、 はソファーに身体を預けた。
タオルを頭に乗せたまま、これまで分かったことを改めて整理し一区切りつける。

(「よし、コーヒー飲んで再開するか」)

筋道が立った。
始めるかと、 は起き上がろうとした。
が、

「そら、コーヒー」
「ん。サンkーー」

瞬間、 の動きが止まる。
違和感なく応じたが、そもそもこの部屋には自分しかいないはずだ。
思わず、視界を遮っていたタオルを外せば、そこにはこの屋敷の家主と視線がぶつかった。
呆気に取られてる に返されるのは、ここにいるのがさも当然的なもの。
の機嫌は一気に急降下した。

「・・・なんで、あんたがここにいんのよ」
「ノックはしたぜ?」
「そういう問題じゃない」

そう言って、 はぐっと拳を握った。








































































何発か制裁を加えた後、並べ替えたメモを眺めていた は、ふとその手を止め、同じ空間にいるもう一人に向いた。

「ティキ」
「なんだ?」
「アレン・ウォーカーがどこにいるか、知ってるわよね?」

片肘をついた が、ティキに身体ごと向き直り、足を組み直す。
縛りが緩いバスローブからは、はらりと脚線美が覗く。
そちらに視線をやったが最後、また何発か食らうのが簡単に予想できたティキは下に視線を落とすのをぐっと堪え、 の問いに答える。

「おいおい、何を言出すかと思えば・・・消えた奴のことなんて知るかよ」
「アレンは14番目と言われているノアだそうじゃない?」
「ああ」
「同族がどこにいるか、知らないって言うの?」
「だから、知らーー」
ーーガシッ!ーー

テーブルに手をついた は、言いかけたティキ胸元を掴み、ぐいっと引き寄せた。
シャワー上がりの特有の香りが男を誘う。
それに意識が傾きそうになった時、 が鋭いワードをティキに突き刺した。

「スキン・ボリック」
「!」

隙をついた一撃に、ティキは僅かに目を見張る。
だが、 の視線が変わらず自分に向けられてる所を見ると、どうやら悟られてはいないのだろう。
危ねぇ、と内心呟くティキに対し、 は相変わらず余裕ある不敵な笑みで小首を傾げてみせた。

「そのノアがユウにやられた時、その場にいないのに感じ取ったそうじゃない」
「・・・どうして、お前が知ってる・・・」
「さぁねぇ、どうしてかしら?」

どうやらしらばっくれても無駄だったらしい。
がその事を知っていたのは、実は教団の閲覧禁止報告書を見たから、であるがそれをティキは知るはずもない。

「同族を探知できる便利な機能がついてるなら、アレンがどこにいるか知ってるわよね?」

胸元の掴みをキツくし、同じ質問を繰り返す
完璧に変な機械扱いされているティキはひくりと口元を引き攣らせた。

「機能って、お前な・・・」
「教えなさいよ、仲間にしたいんでしょ?」

今にも肌が触れそうな距離で はティキの瞳を見据え、呟く。
水気を含んだ挑発的な瞳、しっとりと肌に張り付く暗紫の髪、ずっとこちらを攻撃してくる甘い香り。
こくんと喉を鳴らしたティキは、墓穴にならない言葉を慎重に探し、それを口に乗せた。

「教えたら、仲間になるのかよ?」

その言葉を聞いた は、すっと目を細めると引き寄せていた手を放しソファーに戻る。
拘束から解放されたティキは目を瞬くが、そんな男に返されるのは、まるで虫けらでも見るような完璧に馬鹿にしきった視線。

「・・・ってことは、やっぱりアレンの居場所、知ってるのね」
「!なっ!お、おま!」

ようやく嵌められた事に気付いたティキは狼狽するが、それでは裏付けしたも同然、後の祭り。
ますます は呆れ溜め息をつくと、目を合わせるのも馬鹿らしいと解読したメモに視線を落とし、ティキを視界から締め出した。

「あ〜ぁ、こんな簡単な口車に乗せられるなんて、ノアってやっぱり残念?」
!卑怯だぞ!」
「はあ?勝手に喋ったの、あんたでしょうがティキぽん?」
「ティキぽん言うな!」

夜の帳が下りる静かな夜は、やっぱり今日も訪れることはなかった。















































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2013.12.22