別室に移動したは、どかっとソファに腰を沈めた。
「さ〜て、ネタバレしたところで・・・」
そう言いながら足を組むと、今まで纏っていた仮面を脱ぎ捨て、対面に座る男に不敵な笑みを見せた。
「先ほどの質問にお答えしましょうか。リーバー・ウェンハム班長」
ーーどうよ私の演技っぷりーー
リーバーが記憶している者なのに、口調がガラリと変わった。
科学班にいた頃は、もっと穏やかで物静かに話していた。
だが、今はハキハキと語気もしっかりしている。
対面に腕と足を組んで座っている人物が、同一人物とは思えないほどだ。
「・・・どういうことなんだ?」
「さて、どこから話そうかしらね〜」
一番違うのは、纏う雰囲気だ。
自信に満ち溢れた唯我独尊なその態度に、こちらが優位に立てることを出鼻から挫く。
「まず、お察しの通り、私はジェシカ・キャンベルなんて名前じゃない」
「本当に、・・・なのか?」
「それ以外の何に見えるっての?」
そう言いながら、は目元に手を伸ばすとその手に青いコンタクトが転がる。
そして、再びリーバーと視線を交わした時には、数回だが見覚えのあるエクソシストの顔がそこにあった。
「それにしても、ヴァチカンも言うに事欠いて、この私をスパイ呼ばわりとは」
ボキャブラリーがないわね、とは呆れたように呟く。
色んな感情が渦巻いていた。
教団を裏切ったのかとか、何が目的なんだとか、全てが偽りだったのかとか・・・
だが、口をついたのは、
「どうして、科学班に・・・」
「ん?確かめたい事があったの。で教団で調べてた。
もう粗方終わったから、バレる潮時としてはちょうど良かったわね」
そう言って肩を竦めてみせたに、リーバーは詰めていた息を吐き出した。
そして、少しは落ち着きを取り戻せた事で、再び対面に問うた。
「・・・お前、伯爵側についたのか?俺達を裏切って・・・」
揺れる瞳を、は真っ直ぐに見据える。
暫く、その言葉を噛み締めるようにしていたは立ち上がると、リーバーに背を向け話し出した。
「ねぇ、リーバー。いつか貴方に話した事あったわよね。貴方の事は尊敬に値する人だって」
その台詞に、リーバーは組んでいた手に力が籠った。
そう、あれはいつだったろう。
本部が新たな拠点となって、しばらく経った頃か。
もっと打ち解けてみたくて、どうして教団に入ったのかという話になった。
から語られたのは、親がAKUMAによって殺されたと言う事。
父の意志を継いで、考古学で貢献できる道を探して教団に入る事を選んだという話だった。
立ち入った事を聞いたようですぐに謝ったが、それを受けたはひどく驚いた顔をして、笑った。
そして言ったのだ。
『戦争で人々の心が荒んで行く中、その気遣いと素直な謝意が示せるリーバー班長は尊敬に値する人ですよ♪』
でも、それは自分を油断する為に吐かれた言葉ではなかったのだろうか?
冷静に聞いているようなリーバーだったが、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
それを見透かしたようにはゆっくりと、だがはっきりと言の葉を紡いでいく。
「書類を仕立てて科学班に入ったのは本当だし、身の上話も確かに嘘があった。
でも、貴方を尊敬してるってのは偽りじゃないわ。
貴方の下についている部下も、そんな貴方に支えられているコムイも幸せ者だと思う」
「・・・・・・」
の言葉に、リーバーはどのような反応を返せばいいのか分からなかった。
それを肩越しに見たは、ふっと笑うと両手を上げて軽口をみせる。
「まぁ、信じてくれなくてもいいけど」
ただ、言っておきたかったの、とは話を締めくくった。
言葉を探すリーバーだったが、見つかる言葉なく。
そしては出口の扉を開け、ようやく顔を上げたリーバーと視線が交錯した。
「じゃあね、リーバー」
>余談
「おっと、そうだ。忘れ物っと」
「・・・何をーー」
ーーガシッーー
「!」
「大丈夫よ、ただのクロロホルムv」
「!?!?」
「私に昏倒させられて逃げられたってことにしておいてね♪」
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2013.11.4