「」
「・・・何?」
「なんでドレス用意したのに着ねえの?」
「嫌いなの」
ーーふとした問い、決まりきった答えーー
陽気も穏やかな、うららかな昼下がり。
古文解読に煮詰まっていたは、場所をテラスに移して続きをやっていた。
少しは気が紛れ、進みも早くなるかと思ったが・・・
(「こいつのおかげで、ぶち壊しだ・・・」)
性懲りもなく・・・というか、家主なのだからいるのは仕方ないと思うしかない。
だが毎度毎度、こちらの鉄拳制裁やあしらいに飽きもせずやってくる根性だけは称賛できる。
ま、するつもりなどさらさらないのだが・・・
「あんた、同じこと何回聞くわけ?」
この屋敷に来てやっと1日が過ぎたと言うのに、同じセリフを何度も何度も何度も・・・・
もう聞き飽きて、応酬することすら面倒になってきている。
そんなとは対照的に、手を頭の後ろで組んでいたティキは、椅子に寄り掛かりながら口端を上げた。
「もち、YESの返事をもらうまで」
「・・・死ぬまでやってろ」
まったく、アホらし。
仕事でもないのに、どうして着飾らにゃならんのだ。
まして自分は休業中とはいえ、エクソシスト。
任務で何度か着ることはあったが、基本的に嫌いなのだ。
それは幼少の頃、祖父に預けられていた時。
やたらと『女の子』の格好をさせるのが好きだった祖父にやれドレス着ろだ、ダンスは淑女の嗜みだとか、テーブルマナー礼儀作法云々その他諸々etc…
強制的に叩き込まれた。
(「あぁ・・・あれは嫌な思い出だった・・・」)
当時も、正式ではないにしろエクソシストとして戦場に身を置いていた。
だから、戦いに向いてないドレスは嫌いだったし、反目するようには決まってパンツ姿。
祖父はそれを見る度に、
『せっかくなんだから、もっと女の子らしい格好をせんか、もったいない・・・』
と、耳タコになるほど言われた。
反目精神は今も残っているため、オフはシャツに黒パンツのラフな格好が定着したのだ。
そんなの過去など知る由もないティキは、
「せっかく見栄えがいいのによ、んな色気ない格好・・・もったいない」
「・・・・・・」
は、何とも言えない表情を男に向けた。
どうして祖父と同じことを言うんだ、こいつは・・・
「あんたのご機嫌を取る必要が?仲間に引き入れたいなら私のご機嫌でもとりなさいよ」
にべもなくは言い捨てる。
どうあっても着るつもりがないに、ティキは深々とため息をついた。
「ぜってー似合うのによ」
男の呟きに、は動かしていた手を止めた。
そして、とてつもなく冷めきった視線を男に向ける。
「鷲掴んだものね。そりゃあサイズはぴったりでしょうよ」
「・・・ハハハー」
乾いた笑いが庭園に消えていった。
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2013.10.26