「あー・・・もぉ・・・」
身体が重い。
まるで両手両足に30kgの枷をつけられ、さらに海底に沈められた挙句に、意識を保てるだけの酸素しか与えられてない気分だ。
・・・要するに、怠くてかったるくて仕方がないと言う事なのです。
ーー去った少年、思うように動かない身体ーー
アポクリフォスが去ってすぐ、も地下牢から離れた。
すぐに中央庁関係者が押し寄せるのは目に見えていたし、自分があそこにいる理由を質されれば答えようがない。
リンクは恐らく大丈夫だろう。自分がこうなっているのが良い証拠だ。
自分の部屋へと戻ろうとしながら、はアポクリフォスに言われた言葉の意味を考えていた。
(「中央庁は・・・いや、ルベリエは何かを知ってる。それは私に関係する事で、中央庁にすら隠してる。
でも、ヴァチカンにまで隠す必要って・・・」)
それはなんだ?
あいつは何を知っている?
(「あ"ーもぅ!また厄介な調べものが増えた・・・」)
は頭を抱えた。
だが、まずは先に片付けられるものから終わらせなければ手の出しようがない。
「早く、残りを・・・あの遺跡の文字を解読しなきゃ・・・」
もう少しなんだ。
あと少しで、手がかりがやっと明らかになる。
それができれば、あとは線へと繋ぐだけ。
(「よし、すぐに科学班にーー」)
「ジェシカ?どうしたんだ、こんな所で」
「!」
声をかけられたことで、は驚いたようにその方向を向いた。
考え事をしていたとはいえ、誰かに声をかけられるまで気付けなかったとは。
(「うわぁ、ちょっとショック・・・」)
身分を偽っているとはいえ、エクソシストなのに・・・
と、気落ちしているとは知らず、声をかけたリーバーは軽快に近付いてきた。
は尤もらしい言い訳を口に乗せる。
「あの、凄い音がしたのでちょっと気になって・・・」
「そうーーおいジェシカ、顔色が悪すぎるぞ。どうしたんだ?」
「え?」
思わぬ指摘に、は固まった。
どう返せば詮索をかわせるだろう?
殺されかけた監査官の怪我を引き受けたからこうなりました〜、なんて本当の事を言える訳がない。
その一言に返されるのは、間違いなく10や20じゃとどまらないに決まっている。
「大丈夫ですよ、ちょっと寝不足なだけですから」
「この前もそう言って倒れただろ!最近、多いんじゃないか?」
「えーと・・・」
は言葉に迷う。
今は、使い慣れない力を使ったおかげで素が出そうになるのをかろうじて押しとどめている。
はっきり言って、ボロが出ないようにしているだけで、一苦労だ。
(「くっそ、面倒くさいなぁ・・・放っておけってぇの」)
内心の声をぐっと堪えるが、上手いかわしが思い浮かばない。
黙ってしまったを見下ろしていたリーバーは、溜め息をついた。
「ジェシカ」
「はい?」
「お前、明日から3日間休暇だ」
「・・・・・・は?」
「その3日で体調を整えてこい」
「え?ちょ、リーバー班長!それは困ーー」
「班長権限だ。班員の体調管理だって俺の仕事だ、分かったな?」
それだけ言って、リーバーは歩き去っていった。
呆然とその背中を見送ったは、違う意味で頭を抱えた。
(「ちょっとぉ!これからって時なのにぃーーーっ!」)
心の叫びは当たり前だが、誰にも聞く事はできなかった。
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2013.10.14/2013.10.26修正