ーー紐解かれていく過去ーー



































































次にが意識を取り戻したのはベッドの上だった。
医療班からは過労だろう、と言われそのまま安静にするようにと言われた。
だが、意識を失う前の状況が状況だったはすぐに病室を抜け出した。

(「あれからどれくらい経った?早く戻らなきゃ・・・」)

急ぎ科学班へ戻ろうとしたは、途中、食堂の前を通った。
そして、そこには北米支部にいたはずのリーバーや各地に派遣されたエクソシストの姿があった。
自分はそれだけの時間、意識を失っていたということか。
は進路を変え、リーバーの元へと歩みを速めた。

「リーバー班長!ご無事、だったんですか・・・」
「あぁ、まぁな。お前も、倒れたらしいが大丈夫か?」
「はい、私は大丈夫です。それより・・・」

は他の皆から距離を取り、リーバーに問うた。

「教えていただけませんか?一体、何があったんですか?」
「・・・それは・・・」

言葉を濁すリーバーに、は臆することなく質問を重ねた。

「お願いします!このまま何も知らずに、何もできないままなんて嫌なんです」
「ジェシカ・・・」

そう、エクソシストとして戦場にいた時は、自分はこんなに弱くなかったはずなのだ。
何かがおかしい。
きっとこの戦争には自分に関係する何かがある。
それを知りたい。
そのためにはどうしても情報が必要だった。
普段よりも必死なの様子に、リーバーは迷っているようだったが、しばらくして意を決したように頷いた。

「・・・分かった。落ち着いて聞いてくれるな?」
「はい、もちろんです」



































































リーバーから聞かされたのは、北米支部でノアの襲撃があったこと、そこにあったアルマ=カルマのこと、神田のこと・・・
聞かされた内容に、はすぐに反応を返せなかった。

「アレンは・・・神田とアルマを逃がしたことで幽閉されちまった」
「そう、ですか・・・そんな事が、あったんですね・・・」
「ジェシカ、大丈夫か?」
「・・・はい、大丈夫です」

は弱々しく、笑う。
傍目に見ても、無理しているのが見て取れた。
それをアレンや神田を心配してのことだと思ったリーバーは、元気付けるように手元の紙束の一つをに差し出した。

「そうだ、ほらこれを君に」
「?これは・・・」

は手元に視線を落とした。

「以前、頼まれていた古代言語の解析結果。渡しそびれたままで悪かったな」
「いえ、そんな事ありません。ありがとうございます」

そう言って、頭を下げたはすぐに席を立った。
不思議そうな表情を浮かべるリーバーに、は先ほどより覇気のある笑顔を作った。

「実は、こっそり病室抜け出してきちゃったので、戻りますね」
「おま・・・エクソシストみたいなことするなよな」
「ふふ、すみません」

声を震わせまいと自身を叱咤し、笑顔を崩さぬうちにはその場を後にした。
廊下をただひたすら歩く。
何人かとすれ違ったが、挨拶を返す余裕はなかった。
向かう先は病室ではなく、自分にあてがわれた部屋。
歩みは徐々に早くなり、部屋の扉が見える頃には全速力で走っていた。

ーーガチャ、バダン!ーー

勢いよく扉を閉める。もう、誰に見られようが構わなかった。
そして、は背にした扉に身体を預けるように崩れ落ちた。

「・・・ふっ・・・・・・くっ・・・・」

声を殺すように、口元を手で覆う。
その両目からは次から次へと涙が溢れていた。

(「アルマ・・・ユウ・・・貴方達は、また・・・」)

どうして・・・
どうしてまたあの二人が犠牲を強いられなければならない?
どうして苦しみや悲しみを背負わせれるのが・・・

「・・・めん・・・ごめん・・・
・・・・・・ごめんね、アルマ・・・ユウ・・・」

この場にいない二人に、はただただそう呟き、涙を流すしかなかった。



































































どれほどの時間が経ったのだろう。
落ち着いたは、気分を切り替えようと冷たいシャワーを浴びた。

(「あ"ー・・・ったく、女々しいったらない」)

まぁ、女なんだが・・・なんて、言葉遊びをしている場合ではない。
は深々と息を吐きだす。
今は二人を悼むよりやることが、やらねばならないことがある
濡れた髪をそのままに、タオルを首に引っ掛けたは、リーバーに渡された紙を手にベッドの端に腰を下ろした。
解析されたという紙面を次々に捲る。

「・・・・・・」

だんだんと分かってきた、7000年前にあっこと。
天使ウリエルにまつわる事、その者が持っていたという力の大きさ。
そして、まだ予測の域を出ない推測。

「もしかしたら、この聖戦・・・とんでもない裏が隠されてるのかもね」

だが、まだ結論を出すには早すぎる。
教団が設立され100年もの長い間、続いてきたのだ。
証拠も揃ってない、推論の先入観は危険だ。

(「・・・でも、もしそれが真実だとしたら・・・」)

やるせない気持ちに、手にした紙にシワが寄った。













































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2013.10.14/2013.10.26修正