直帰の願いが叶わなかった、ファインダーとジジを伴って、達は孤児院の前へとやって来た。
マリ達、エクソシストがここに行くことを連絡してから、その後の足取りが掴めないらしい。
ジジ達が調べるとその孤児院は、どうやら普通の状況ではないようだった。
ーー跳ね上がる鼓動ーー
暫くして護衛の一人、長身の方が孤児院の中に消えた。
目の前で見たときは、少々驚いたが同時に警戒心が持ち上がる。
鴉とはまた違う、得体の知れない相手なのだと。
そして、ジジやファインダーが入り口の前で話をしていた時だった。
ーードクンーー
「!」
突然、鼓動が跳ね上がったのをは感じた。
思わず、胸元を押さえる。
(「な、何・・・」)
胸が苦しい。まさか動悸か?
若い身空でそんなバカな・・・
(「気の所為、気の所ーー」)
ーードックン!ーー
「っ!」
しかし、再び襲われた息苦しさに、立つことすらできず、後ろに控えていた小柄な護衛にぶつかった。
「ジェシカ!どうした!?」
様子がおかしいことに気付いたリーバーが慌てて駆け寄る。
そんな中、が護衛に謝罪を口にしようとした。
「すみまーー!」
瞬間、は身を固くした。
(「な、に・・・こいつ・・・」)
エクソシストとして培った本能が警鐘を鳴らす。
・・・違う。
こいつは、違う。傍にいてはならない。
そして、護衛がに触れようとした。
瞬間だった。
ーーパンッ!ーー
無意識にその手を跳ね除けた。
「!?」
驚くリーバーの声に、ようやくは我に返った。
「あ・・・す、すみま、せーーっ!」
だが、再びの息苦しさには続きを言えなくなった。
隣に膝をついたリーバーが何かを言っているようだが、鼓動に掻き消されて聞こえない。
恐らく、気遣う類いのものだろうと判断し、は、なんでもない、と続けようとする。
が、それは音にならず浅い呼吸を繰り返すだけにしかならなかった。苦しさが収まる気配はない。
「お前、何か持病でも・・・」
リーバーの焦る声に、は首を振った。
「・・・ちょ、と・・・めま・・・いが・・・・・・」
「すぐに医者に連れいく、少しの間辛抱しろ!」
リーバーに抱きかかえられながら、は胸元をさらにキツく押さえた。
(「なんだ?この突き上げるような感情・・・
うれ、しい・・・?でも、何が・・・」)
分からない。
だが、この場から離れてはこうなった手掛かりも失われてしまうかもしれない。
(「それは・・・ダメだ」)
ーーグイッーー
瞬間、はリーバーの服を引っ張り、それ以上の動き止めさせた。
「だい、じょ・・・です」
「何言ってる!」
怒声が響くが、は苦悶の表情のままリーバーを真っ直ぐに見据えた。
「休めば・・・だい、丈夫・・・です、から。
それより、エクソシストのみんなを・・・」
「ジェシカ・・・」
リーバーの不安げな面持ちは、孤児院を見つめるの目に映ることはなかった。
リーバーも、ジジやファインダーと一緒に孤児院の建物を調べ始めた。
が頑としてこの場に居座ると言い張り、ならばすぐに孤児院の結界をなんとかするという事になったのだ。
はベンチに座り、徐々に収まる息苦しさにようやく肩の力を抜き始めていた。
リーバー達は建物に登って、再びあーでもない、こーでもないとやっている。
そんな中、は横目でちらりと護衛を見た。
(「こいつら・・・本当に人間?だって、あの感覚は・・・」)
間違える訳がない。
だって、あれは・・・
(「・・・あれは、AKUMAと対峙した時の感覚だ」)
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2013.10.14