科学班に席を置いたは、己の調べ物を着々と進めていた。
そして、クロスが行方不明になって3ヶ月が過ぎた12月。
はリーバーの付き人として、パリの地に出張を命ぜられるのだった。
ーー精神汚染を回避してみたーー
「リーバー班長、警部とアポ取れました。
それと、中央庁経由で赦免状と協力要請書も用意できましたよ〜」
「分かった。ジェシカは仕事が早くて助かる。
どっかの巻き毛に少しは見習わしてやりたいもんだ・・・」
「ふふ、ありがとうございます」
な〜んて、笑顔で返すだが・・・
(「とっとと帰って、続きをやりたいのよ」)
という、内情をリーバーは知らない。
だがここで表面に苛立ちや焦りを見せれば突っ込まれること確実な為、は話題を変えた。
「なんだか、大変なことになっちゃいましたね」
「そうだな・・・まぁ、ひとまず許可も降りた事だし、一度面会に行くか」
「ええ、そうですね」
そして、馬車に揺られること数十分。
拘置所へと到着する。
この場には、とリーバーの他に二人いた。
それはコムイの秘書、フェイ補佐官が手配したという護衛。
緋色の衣をまとい、顔の半分を隠すような薄布を当てられた笠を被る。
唯一、感情が分かるのは引き結ばれたその口元ぐらいか。
まるで鴉に通づるようなそれに、としてはお近づきになりたくないのが本音だった。
その護衛と距離を取るように、は中央庁からの書類を提示し拘置所へと案内を依頼する。
威力は絶大で、スムーズに目的地へと到着する。
そして、目の前には・・・
(「何これ?季節外れのハロウィン?」)
随分とふざけた格好だ。
これで怪盗を名乗るとは、少しはビジュアルも考えてほしい。
ここは流行の発信地、パリなんだが・・・
(「これが巷で騒がれている怪盗、ねぇ・・・」)
イノセンスと関係あるなら、ここに拘置されている者は皆巻き添えをくらったというところか。
さて、教団の関係者はどこにいるかなぁ、とは辺りを見回す。
すると、横になっている人物にマッサージしている目的の人物達をは発見した。
そして後ろでガルマー警部と押し問答をしているリーバーを呼ぶ。
「あ、リーバー班長。
いましたよ〜ファインダーとジジさーー」
その時、は悪寒を感じ視線を向けた。
そこには、こちらに飛びかかってこようとする顎髭を生やしたタラコ唇のアップ画。
ちなみに、衣装からはキューティクルな髪がのぞく。
精神衛生上、とてもよろしくない。
瞬間、はさっと、しゃがみ込み靴ひもを直すフリで、これ以上の精神汚染を回避した。
しかし、後ろからは自分に何が迫っているかを知らない男がの隣に立つ。
「ジェシカ?どうしーー」
ーーバリィーーーン!ーー
瞬間、ガラスが割れる甲高い音。
あれ?拘置所のこういうのって、硬質製なんじゃ・・・
そう思っているうちに、リーバーはそのタラコ唇ががっしりと抱きしめた。
リーバーの悲鳴が上がる。
「どわあああっ!」
「好き!貴方惚れたわv逃がさないわよぉv!」
「・・・・・・」
どうやら、心は乙女な方なようだ。
「きゃー、たいへーん。リーバー班長が捕まったー(棒読み)」
これをなんとかしなくてはいけないことへの現実逃避に、は一人呟いてみた。
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2013.10.14