「・・・・・・あれ?」

気がついてみれば、は縄で縛られていた。





































































ーー他人の目がないからこそ、思う存分に実力発揮ーー
































































目の前には書類の山。
どうやら場所は変わっていない。
だが見下ろせば、後ろ手に縄で縛られていて。

(「は?え?なんで??確か、扉を開けてーー」)
ーーギュッーー
「!」

と、縄の締め付けに、は勢い良く振り返った。
そこには、縄を持ってるリーバー。
バッチリと目が合うと、はうるっと両目に涙を溜めた。

「・・・・リーバー班長、こんなご趣味が?」
「違う!断じて違うぞ!!身体が勝手に・・・」
(「勝手に、だぁ?」)

エクソシストだった自分が不意を突かれたことが、ひたすら情けない。
こちらのプライドを傷付けた罪は重い。
そんなふざけた事で赦されると思うなよ。
と、はさらに演技を重ねようと視線を下げた。
瞬間、

「!」
『ごれでお"前も、逃げられない』

は固まった。
リーバーの腹に、なんか生えてる。
見た目は髪の長い人間・・・

(「いやいやいやいやいや。普通、人間は生えないし」)

思わず一人ツッコミをしてしまう。
AKUMAか?でも、そんな感じでもない。
もしや、これは・・・

「・・・リーバー班長、まずは産婦人科に行きますか?」
「どうしてそんな方向に持って行くんだ、ジェシカ・・・」

俺は間違いなく男だ、と涙を流すリーバー。

『残りの奴らも、もうずぐ捕まる』
「これ・・・あなたがやったの?」

リーバーの腹から生えているモノには訊ねる。
腹から生えている、ということを除けば10歳前後の少女。
だが、声は見た目に反し老人のように嗄れているというか、潰れている。
取り乱すことなく、落ち着いて話しかけるの問いに少女は押し黙った。
は臆せず続ける。

「目的は何?」
『・・・お"前、わだじが怖ぐないのが?』
「質問してるのはこっちよ。
あなた、何がしたいの?」

は真っ直ぐ、少女を見つめ繰り返す。
それを呆気にとられた表情でリーバーは見ていた。
そして、暫くしてから少女は口を開いた。

『・・・みんな、ごごで暮らず。
誰も、逃がざない』
「おわっ!」

そう少女は言い残すと、リーバーは立ち上がり部屋を出て行った。
やはり元凶はあれと考えるのが妥当か。
リーバーは操られているのだろう。
ま、今回は相手が人外のもの、幽霊みたいな類いか。
インテリにやられた訳ではないので、プライドは守られたことにはなるが・・・

「いやぁ、幽霊なんて初めて見た・・・」

AKUMAは数え切れないほど相手にしてきてが。
しかし、さっき少女の話を信じるとなると、ハッスル集団もあの少女が絡んでいるような気もする。
どちらにしろ、このままでは自分が変な事に巻き込まれることになる。

「はぁ〜、なんかすんごいことになってるわね」

そう呑気に言ったは立ち上がる。
そして、ふぅ〜、と長く息を吐き、ぐっ、と腹に力を込め手近の壁に肩を打ち付けた。

ーーゴキッーー
「っ!」

鈍い音と共に、肩に激痛が走る。
それに顔をしかめながらも、は縛られていた縄を解く。
僅かに擦れた手首をさすりながら、は面倒そうに呟いた。

「さて、こればっかりは尻拭いしないと引っ越しどころじゃないかな?」

そう言って再び息を吐き出し、

ーーゴキッ!ーー

外れた肩の関節を元に戻す。
走る激痛に、思わず涙が滲んだ。

〜〜〜っ、久々にやった・・・」

全く、エクソシストよりも割に合わないような気がしてきた。






























































は部屋を出ると、原因の主を探した。
ハッスル集団がそうなった理由を、あの少女なら知っているだろう。
うろうろと歩きながら、ついに食堂まで来た。
すると、そこにはハッスル集団が集まっていた。

(「統率が取れてる?どうして・・・」)

暫く見ていると、中国で会ったリナリーが兄であるコムイに馬乗りになっていた。

(「兄妹ケンカ?まさか、これ全部が・・・?」)

うわー、傍迷惑極まりない話だ。
だが事態はそれとは違う様相を見せる。
リナリーが泣きながらコムイに引っ付いたかと思えば、これも中国で一度会ったトサカ頭の男が二人に襲いかかろうとし、
それを頭上から現れたコムイのようなロボに注射のような武器で撃沈された。
もう、何がどうなってるのか訳が分からん。
そして、コムイの縄を解いたロボが、ハッスル集団に向かうように指示されて・・・

ーーチュドーーーンッ!ーー
「・・・・・・」

撃破された。

「・・・なんだかなぁー・・・」

ポリポリと頬を掻くは、半眼で呟く。
もう、かなり面倒なことになってる。
どうしようかなぁ、と思っていた時、の目に飛び込んできたのは・・・

「きゃぁvクラウド元帥、なんてあられもないお姿v」

タオル一枚をその身に巻いた、自身がリスペクトする女性の姿。
まるで風呂上がりのようなそれは、豊満な曲線美を見せている。
と、

ーーザンッ!ーー
「っと!」

不穏な気配にその場を飛び退けば、先ほどがいた所に、ノコギリのような双頭剣が突き刺さっていた。
チラリと視線を移せば、そこにはクラウドと同じようにタオル一枚の中年二人の姿。
は呻いた。

「うげ・・・フロアに殺人狂・・・」

とてつもなく、気色悪。
これは視界にも記憶にも残したくないモノだ。

「おや、可愛らしいお嬢さんじゃないか」
「おうおう、まだ残っていたのか。獲物ちゃぁ〜ん♪」
ーーカチンーー
「・・・獲物だぁ?」

こっちは肩の関節まで外してここまで来てやったというのに、今度は獲物扱いかよ。
そこまで心が広くないのは自覚済みだ。
理性が飛んでるなら丁度いい、それに向こうは元帥。
下手に手加減の必要はないってことだ。

「うふふっ、上等じゃないの」

それまでの仮面を取り、素に戻ったはうっそりと笑うと、タイトスカートの両脇を裂いた。

ーービリッ!ーー
「弦月、発動」

胸に隠されたクロスを取り出し、そう命ずれば、の手に光の弓が現れる。

「ほぉ〜・・・なんだ、少しは楽しめそうじゃねぇか」

舌なめずりするソカロ。
それに、は口端を上げ、

「さて、それはどうかしら?」
「!」

背後で響いた声に、ソカロは驚愕し振り返る。
が、それより早く光の矢がソカロの四肢を貫いた。
片膝をつきながらも、顔を上げればそこには意識を失ったクラウドをソファに横に寝かせ、自身の白衣をかけている女の姿。

「ぐっ・・・てめぇ・・・」
「さすがに頑丈だこと。
ま、クラウド元帥の綺麗な身体を傷つけるのは忍びないし、手荒な事はしたくないので、拘束ぐらいで済ましときますけど・・・」

そう言ったはソカロに向き直る。
そして弦月を肩に置くと、はとても美しく笑った。

「私にその汚らわしい姿を見せたからには、手加減なんざしてやらないんだから。
覚悟してもらうぞ、こら」



































数時間後、女性の声でアジア支部に救助要請の一報が入る。
バクをはじめ、アジア支部員が教団本部に行ってみると、簀巻きの上に頑丈な鎖で転がされたソカロ・ティエステルドール元帥の姿。
そして、大量のハッスルした集団が一行を出迎えたのだった。













































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2013.10.14