通信を切り、ゴーレムをオフ状態にしたはある人物を捜していた。
クロスではない。
まぁ、見つけて腹いせにいろんなことをやってやりたいのは山々だが、それよりも優先すべき事ができてしまったのだ。


































































ーー純情を弄ばれた・・・とでも思った?ーー






























































食堂に足を踏み入れたは、周囲を見回す。
すると、こちらに背を向けるように並んでいる、包帯の巻かれた白と金の頭。
そしてそのテーブルには胸焼けでもしそうなほどの、大量の料理。
間違いない。
は颯爽とその場に歩みを進め、白い方の顔を覗くようにテーブに手をついた。

ーートンッーー
「?」
「こんにちは、紳士で噂のエクソシストさん」

にっこりと笑いかければ、向こうはお食事中のようで、口にみたらし団子を十本ほど頬張っていた。

「ふぁい?」
(「うわぁ、キレイな人だな・・・師匠が好きそう」)

声をかけられたアレンは、目の前にある顔を見て素直な感想を持ったが、バレでもしたら相当な恐ろしい事が待っているとはまだ知らない。
挨拶を交わし合う二人に、アレンの隣に座っていた金髪の男が淡々と呟いた。

「何の用ですか?アジア支部エクソシスト、
さんって・・・あ、アジア支部の!ゴーレムで話したあのさんですか?」

みたらしを飲み込んだアレンが言えば、肯定するようににっこりと笑った
そして、アレンに向けたそれとは違う鋭い視線をリンク向けた。

「貴方、確かルベリエの犬よね・・・」
「ハワード・リンク監査官です」

きっちりと訂正したリンクに、はぴしゃりと言い捨てた。

「腰巾着に用はないの。時間もないから引っ込んでて」
(「な、なんか顔に似合わず超毒舌」)

間近での舌戦を見ながら、アレンは成り行きを見守る。
そして、はすぐにリンクから視線を剥がすとアレンの肩に手を置いた。

「ちょっと付き合ってくれる?」
「へ?」
ーーパシッーー
「待ちなさい、彼は私の監視対象でーー」
ーードゴンッ!ーー

の手を掴んだリンクが、壁に埋まった。突然の事に、辺りは水を打ったように静まる。
あまりのことに状況を把握しきれないアレンは、壁に埋まっているリンクに恐る恐ると言った感じで声をかけた。

「リ、リンク!?」
「諄いのよ」
「あ、あの!さん、いきなり何ーー」
ーーガシッ!ーー
「来て」
「は?あ、ちょ、ちょっとぉ!!」

はアレンの腕を掴み、強制的に食堂から引き摺り出して行った。



























































とある部屋に入り、すぐさま鍵をかけた
全くついていけない状況に、アレンは自分を引っ張り込んだ張本人に説明を求めようとした。

「あ、あの・・・」
「貴方が、アレン・ウォーカー」
「は、はい。そうですけど・・・」

自分のフルネームをわざわざ呼ばれ、訝りながらもアレンは頷く。
それを確認してどうするのだ?

「そう、貴方がーー」

アレンの言葉に、は小さく呟く。
そして距離を詰めたはまじまじとアレンを見つめ、少年の頬に触れた。

「へ?」

アレンは抜けた声を上げる。
が、二人の距離はどんどん狭まり、吐息がかかるほど近くなっていく。

「え、えっ!ちょ、レ、 さん!?」

何がどうなって、こういう状況になっているのか分からない。
顔を真っ赤にしたアレンはあたふたと慌てるしかできない。

(「ど、ど、どうなってるんだ!?!?」)

パニック状態のアレン。
対して、間近な距離でアレンの両頬に手を置いたは、

ーーギューーーーーーッ・・・ーー
「貴方がクロスの弟子だったとはね・・・」
「イタタタタタッ!痛い痛い痛い痛い痛いです!!」

アレンの頬を両側に思いっきり引っ張った。
あまりの激痛に本気でちぎられるのでは、と恐怖したが暫くして、満足したのかは頬を解放してやった。
これでもかと言うほど、引き延ばされた頬を押さえたアレンは涙で潤んだ目で訴えた。

「な、何するんですかぁ・・・」
「師匠の不始末を弟子に払ってもらっただけ」

当然のように言われたが、アレンにしてみれば完全に置いてけぼりを食らっている。

「・・・あの、全く話が見えないのですが・・・」
「説明してる時間はないの。クロスのおかげで、私もう出歩けなくなっちゃった訳」
「出歩けないって・・・どういうーー」
「・・・それを私の口から言わせるの?」

声を潜め、表情を暗くしたの仕草に、アレンは慌てて謝った。

「ご、ごめんなさい!師匠から何か酷いことされたんですね・・・」
「ええ。それはもう、筆舌に尽くし難いくらいに、ね」
(「師匠、こんなキレイな人になんてことを・・・」)

アレンの勘違いが絶賛進行中の中、はそれまでの表情が嘘のようにピンとアレンに指を立てて笑顔を向けた。

「で、弟子である貴方に責任をとってもらうわ」
「・・・はい?」

の言葉に修業時代の辛い過去の悪夢が蘇るアレン。

「あ、あのぉ〜・・・もしかして借金だったらーー」
「あんな奴に金を貸すわけないでしょ」
「そ、そうですよね」

良かった、とホッとするアレン。

「借金以外なら、僕にできることは喜んで」
ーーニヤリーー
「そう?じゃあーー」

隠した笑みを浮かべたは、これまでの態度を一変させた。
アレンのネクタイを掴むとグイッ、と引き寄せ、間近にな距離で呟く。

「方舟でアジア支部の近くに新しくゲートを開けて」
「・・・・・・はい?」

首を傾げるアレンだが、目の前にはとても綺麗な笑顔があるだけ。
なんだが、断わったら恐ろしい事が待っているような脅しが言外に含まれているような気がする。

「あ、あの〜・・・どういうーー」
「諄い、さっさとする」

反論を許さないそれ。
だが、アレンも自分がそんな事をできる状況でないことは理解していた。

「あの、僕、中央庁から監視されてる立場でして、勝手しちゃうといろいろと立場が・・・」
「問題ないわ。コムイとバクから了承は取ってるから。はい、これ許可証」
「は、はぁ・・・でも・・・」

許可証と呼ばれるものを押し付けられながらも、未だに釈然としないアレン。
そんな彼には誰もを安心させるような、笑みを浮かべた。

「大丈夫、責任は私が取るから」
「まぁ・・・コムイさんとバクさんの許可をもらってるなら・・・」

大丈夫かな、と呟くアレン。
その言葉には口端を上げた。


































その後、言われた言葉が偽りだとアレンが知るのは、リンクが追い付いた少し後の話である。
こうして、はまんまと黒の教団から逃走に成功したのであった。














































>余談
「ウォーカー!!勝手に方舟を使用するとはどういうことだ!?」
「ええっ!?だって、さんからこの許可証を・・・」
「・・・これは偽物だ!だいたい、方舟の使用に許可証が必要だという決まりはない!」
「え・・・えええぇぇぇっ!!!そんなぁっ!!」
「ウォーカー、この責任は大きいぞ・・・」
「それ僕じゃなくてさんに言ってくださいよぉ!!」






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2013.9.30