暗かった視界が少しずつ戻ってきた。
そこは薄暗い所で、周囲は蝋燭が浮かぶ。
ーー殴り込み、だったんだけど?ーー
「変な部屋・・・コムイ、聞こえる?」
呼びかけてみたが、通信機は何の反応も示さなかった。
「コムイ?・・・通信は無理、か」
故障ではないだろう。ならこの部屋を出るまで通信は無理だと考えるのがいい。
歩みを進めるの前に、一つのドアが現れた。
迷う事なく押し開ければ、そこには長いテーブルと空いた椅子。
そして、
「ハイ、コンバンワ〜v」
特徴的な身体のフォルム。突き出た腹。
こちらが掴んでいる情報通りなら、こいつが・・・
「ご招待に預かり光栄です、とでも申し上げれば?千年伯爵」
「貴女がティキぽんの相手をしたエクソシストですネv?」
「は?ティキぽん?」
「おや、違うのですカv?」
全然可愛くもないのに、小首を傾げくる伯爵には呆れた表情を浮かべた。
(「あいつ、そんな風に呼ばれてんの・・・恥ずかし奴」)
「そうなるでしょうね。
で?家族思いな伯爵様は敵討ちでもするつもりかしら?」
ざっ、と半歩引いたはいつでも戦えるように身構える。
しかし、向こうは形容しがたい表情のまま、動こうとしない。
と、
「へぇ〜、この人がティッキーをボコボコにしたエクソシストなんだぁ〜」
「!」
背後を取られた事に、は勢いよく振り返った。
そこにいたのは、フリルのドレスを纏った少女。
ただ人間と一線を画す、灰色の肌と額にある聖痕。
「ノア・・・」
「僕はロード。おねぇさんはって言うんだよね〜」
後ろ手を組んで訊ねてくる少女を見下ろしたは、ロードへの警戒を怠らないまま、伯爵に向ける視線を険しくした。
「2対1だなんて、随分卑怯ね」
「あれぇ〜、なんか勘違いしてるみたいだよ」
「は?」
いつの間に移動したのか、ロードは伯爵の背中越しにに笑いかける。
やはり、あの少女もノアな事に変わりはないか。
それに言われている意味が分からない。
「ディナーでもいかがですカv?」
「気分じゃないわ」
「まぁ、そう言わずに座れよ」
聞き覚えのある声に首を巡らせれば、自分がこの場にやってきた目的の人物が椅子に座っていた。
あの時・・・
4日前と同じ、格好で。
「折角、招待してやったんだからよ」
「ティキ・ミック・・・」
「千年公〜、僕ケーキが食べたぁい」
「仕方ないですネェ〜v」
向こうは晩餐する気満々だ。これでは話を聞こうにも聞ける状態じゃない。
流されるのは大変癪に障るが、仕方ない。
は手近の椅子に向け歩み出した。
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2013.9.29