食堂へ向かいながら、は楽しげに呟いていた。
「何食べようかなぁ〜、自棄食いの気分でもないし・・・
そう言えばDr.は消化のいいものをとか言ってたっけ〜
なら、やっぱりここは杏仁豆fーー」
「こっのぉ・・・ドアホがーーー!!!」
ーードギャーーーン!!ーー
・・・なんか、物凄い音が聞こえた。
ーー迷ったんなら単純化してみりゃ、簡単でしょうがーー
楽しい考え事の邪魔をされ、はその音源らしい扉を開いた。
「うっさいなぁ、何?」
入ってみれば、そこは訓練場の一つ。
そこにはフォーが何時ぞやに竹林で見つけた少年とあらん限りの声で言い争いをしていた。
お互いにブチ切れているような形相で、科学班見習い(だったはず)に後ろから拘束されていた。
「あーらら、フォーがあんなにキレるの見るのも久しぶりかも」
手近の柱に身を預け、完全に傍観者を決め込んだは呟く。
そして、少年が強制退場させられたのを見送ったは、未だにご立腹中のフォーに声をかけた。
「何やらかしたの、あの子?」
「
!ちょうどいい、てめぇ付き合え!」
「はぁ?私これから食堂にーー」
ーーバシッ!ーー
声をかけるんじゃなかった。
いきなり殴りかかってきたフォーの拳を危なげなく防いだは内心呟く。
問答無用に怒りの発散の相手になってしまった。
「あんの、モヤシが!ウジウジ、ねちねち、しやがって!」
「訳わかんないんだけど・・・」
今度は両手を大鎌に変えたフォーの斬撃を避ければ、首にかけてあったタオルが飛ぶ。
これは話を聞くまで付き合うしかないか。
は弦月を剣の形に発動すると、フォーに向き合った。
「で〜?何が、あった、ってーーっと!言う、わけ?」
「ああ!あんの、モヤシが、なぁ!・・・」
当たれば間違いなく致命傷だろうそれを互いに避けながら、剣戟の間に言葉を交わす。
そして、一通り事情を聞き終えたは、
「ふぅ〜ん、なる、ほど、ねぇ〜」
「なぁ?ムカツク、奴だ、ろ!・・・はぁっ!」
「おっと・・・・・せぃっ!」
振り下ろされた一撃をいなしたは、フォーを弾き飛ばす。
そして、距離が空いたことでは問うた。
「で?その子は結局、何がしたいわけ?」
「は?だから言ってんだろ、イノセンスを復活させてーー」
「それって今の目的でしょ?」
「・・・何か違うか?」
なんだか話が噛み合ってない事に、は話の路線を少し変えた。
「フォーは人の行動原理って知ってる?」
「?」
首を傾げるフォー。
ならここから話すか、とは続けた。
「人ってね単純なもので、目的がなければ動かないのよ。
どんな手段があっても目的が無ければ、無意味。
目の前に大金があっても、欲しいものがなければそれは要らないでしょ?」
「ああ、まぁな・・・」
「誰にも譲れない目的があるから、人は動ける。戦場に身を置いているなら尚更。
ただ、それは人それぞれの価値観によるものだから、同じものは一つも無い」
滔々と語るだが、フォーの方はまだ釈然としない表情を浮かべる。
なんだかこれ以上話してもややこしくなりそうだ、と判断したは結論を言った。
「あの子は戦場に戻りたい、仲間を助けたい、イノセンスを戻したい・・・
いろいろ喚いてたらしいけど、それって建前にいろいろこじつけてるだけに聞こえる」
そこまで言っては一度口を閉じた。
そして、もっとも自分が聞きたかったことをフォーに投げかけた。
「結論、あの子の目的は?
手段であるイノセンスの復活ばかり求めてるようだけど、あの子は結局何をしたい訳?」
そこまで言ったに、それまで黙って聞いていたフォーが口を開いた。
「ウォーカーに目的が無いって言いたいのか?」
「そうは言わないけど・・・目的が見えなくなってるように感じた。
他人の私から見てね」
「・・・・・・」
の言葉にフォーは大鎌の発動を解き、本格的に考え込み始めた。
それを見たも発動を解くとタオル拾い、首に再び引っ掛け歩き始めた。
「目的を見誤れば今の立ち位置すら分からなくなるわよ?」
それだけ言い残すと、じゃあね〜、と後ろ手を振りその場を後にしようとするをフォーが呼び止めた。
「おい、待てよ」
「なぁに?」
「それ、ウォーカーに言ってやれ」
フォーから言われた台詞には足を止める。
そして目を瞬かせた後、首を傾げた。
「・・・なんで私が?」
「拾った責任取れよな」
「は?支部まで運んで、今も面倒を見てるのはフォーでしょ?
途中で放り出すなんて無責任なこと、いけないと思うな〜」
「そう、か・・・それもそうーー」
尤もなことを言われ、フォーは納得しかけた。
が、はた、と我に返った。
「じゃねぇ!!
はあぁ!?ふっざけんなよ!それはあの時お前が動けなかったからでーー」
「じゃ、私、杏仁豆腐食べないといけないから」
「逃げんな!こら!!」
フォーの咆哮を聞きながら、は軽快な足取りで食堂に向かった。
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2013.9.24